全仏予選2日目、日本勢は内島萌夏が会心のストレート勝利!内山靖崇と本玉真唯は熱戦を制し2回戦へ<SMASH>

5月26日に開幕するテニス四大大会「全仏オープン」(5月26日~6月9日/フランス・パリ/クレーコート)の本戦に先駆け、20日にスタートした全仏予選。大会2日目の21日には未消化の1回戦が行なわれ、日本勢からは内島萌夏(世界ランキング80位)、本玉真唯(同114位)、そして内山靖崇(同214位)が登場。3選手ともに勝利し、2回戦に歩みを進めた。

ITF3大会連続優勝、その間に連ねた白星は15――。そんな連勝街道を爆走し、内島がパリへと乗り込んできた。

日本からヨーロッパへの移動も含む3週間の激闘は、当然ながら疲労として身体に残る。ただそれ以上に今の彼女を満たしているのは、揺るぎない自信だ。

初戦の相手は、226位のジュスチナ・ミクルスカイテ(リトアニア)。予選に簡単な試合はないものの、今の内島にとっては、難しい相手ではなかった。無理せずボールを左右に打ち分けるだけで、相手は劣勢に追い込まれる。立ち上がりから怒涛の5ゲーム連取で、内島が第1セットを6-2で奪取。第2セットは1-1から、またも5ゲーム連取で6-1とゴールラインを駆け抜けた。
わずか51分の快勝を手にした内島が、試合後真っ先に尋ねたのが、「内山さんの試合は、どうなってます?」。内島と内山は同じ時間に試合が始まり、内島が勝利したまさにその時、内山は第1セットを6-4で取っていた。

「私がスペインのITFで優勝した同じ週に、内山さんは釜山のチャレンジャーで優勝したんです。しかもセンターへのエースという、同じマッチポイントの取り方で」

そんな縁もあってか、22歳の内島は、9歳年長の内山の試合を気にかけている様子。

「ダブル・ウッチーで頑張りますよ!」

数10メートルほど離れたコートから、笑顔で熱いエールを送った。

内島にエールを送られた内山だが、第2セットは劣勢に立たされていた。対戦相手は、地元フランスのワイルドカード選手。観客の大声援をエネルギーに変え、第2セットを6-2で奪い返した。

そのアウェーの状況下で、内山は冷静に考察する。

「自分も声を出して闘志をむき出しにすると、逆に観客を煽ることになるかもしれない。逆に自分は冷静に、淡々とやろう」

その「淡々」とした心の在りどころが、「変な力みを消した要因だったかも」と、後に内山は振り返る。ファイナルセットは、重要な局面での微妙な判定を巡り、主審に抗議する場面もあった。それでも冷静さを保ち、2ゲーム後に再び巡ってきたブレークのチャンスをものにする。

最終ゲームでも、痺れる場面で絶妙なドロップショットを沈めるなど明鏡止水。この2年間、重なるケガに苦しめられてきた元世界78位が、4年ぶりにグランドスラム(四大大会)予選での勝利を手にした。
夕刻の降雨のため全体の進行が遅れ、西日が寒気をオレンジに染める中、本玉の試合は始まった。

右足ふくらはぎに厳重にテーピングを巻く本玉の動きは、明らかにいつもの躍動感を欠く。飛び上がれないためサービスの打点も低くなり、ゲームキープに苦しんだ。

そんな本玉の状況を見抜いてか、相手のキャロル・ジャオ(カナダ/同228位)はドロップショットを多用する。それでも地力に勝る本玉が第1セットを7-5で奪い、第2セットも勝利へのサービスゲームまでたどり着いた。

だが、マッチポイントがありながらもブレークを許すと、そのまま逆転を許し第2セットは7-5で相手の手に。

ファイナルセットも、ポイント間に足を引きずる本玉は、ブレークされマッチポイントまで追い詰められた。
だがここから、吹き出るアドレナリンが痛みをマヒさせたか、本玉が驚異の脚力と心の強さを発揮する。リードされるたびにライン際にウイナーを叩き込み、凌いだマッチポイントは実に7本。剣が峰でブレークバックをもぎ取ると、走る足を緩めなかった。

日没と共に気温は急激に下がり、時計の針は22時を回るも、試合を見守る観客たちは本玉の闘志に呼応し加熱する。”マイ・ホンタマ”コールも巻き起こるなか、最後は本玉のボレーが3時間の熱戦に終止符を打った。

これで前日の望月慎太郎(同163位)と齋藤咲良(同251位)の結果も含め、日本勢は5選手が初戦を突破。いずれの選手も、現地時間22日に2回戦を戦う。

現地取材・文●内田暁

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