岸田首相の“増税メガネ”払拭狙いミエミエ 「定額減税」給与明細に明記強要の大迷惑

「メガネ」をかけ替えたい岸田首相(C)日刊ゲンダイ

「減税の恩恵を国民に実感いただくことが重要」──。6月から実施する定額減税について、岸田首相は20日の自民党役員会でそう強調した。祖父も父も衆院議員の世襲ボンボン、中流家庭の苦労を知らない上から目線の発言が鼻につく。減税アピールに心血を注いでいるが、狙いは「増税メガネ」の払拭がミエミエ。国民にはハタ迷惑でしかない。

定額減税では、1人あたり年間で所得税が3万円、住民税が1万円減税される。1人あたり月3000円あまりの小遣い程度に過ぎないのに「減税の恩恵」とは片腹痛いが、わざわざ政府は所得税に関して事業者に減税額を給与明細に明記するよう義務付ける。来月1日に施行される関係省令改正で義務化を行う。

「税理士や社労士、企業の経理担当などは大変でしょう」とは、立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)だ。こう続ける。

「ある医療関係団体で講演したとき、労務士の方から『定額減税によって手間がかかる分、手数料をいただいていいものなのでしょうか』と聞かれました。手数料を取りたいぐらい難しくて大変というわけです。事務負担が増える割に、1人あたりの受益は小さく、極めてバランスが悪いと言わざるを得ません。『減税』を掲げた人気取りにしてもひどすぎる。インボイス制度の導入の際にも指摘されたように、実際に『恩恵』を受けるのは会計ソフトなどを扱う電子産業ぐらいでしょう」

税制を所管する鈴木財務相は21日の会見で「企業などにとって負担といえば負担だが、ぜひ協力をお願いしたい」と発言。筋ワル政策による事務負担増を分かっていながら、開き直ってみせた。

「そこまでやるか」と言いたくなるが、岸田首相は「集中的な広報などで発信を強める」と鼻息荒い。まさか、「減税メガネ」のアピールに血税をつぎ込むのか。今後の広報活動について財務省に問い合わせると、「総理発言は報道で知っているが、新たな広報戦略を具体化していく方針は今のところない」(主税局)と回答した。

■消費税を下げればいい

「本当に減税に取り組む気なら、消費税を下げればいい。事務負担を増やすだけの定額減税よりも、よほど簡単で効果が分かりやすいと思います」(浦野広明氏)

ちなみに、政府による電気・ガス代の補助金が6月使用分から消失し、標準世帯では年間約3万円の負担増が見込まれる。雀の涙ほどの「恩恵」すらかすんでは、「増税」から「減税」へのメガネのかけ替えは到底、無理だ。

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