茨城でコウノトリ10羽誕生 神栖・行方  自然繁殖 「無事に巣立って」

地上に降ろされ、検体採取や足環を装着されるコウノトリのひな=神栖市矢田部

国の特別天然記念物コウノトリが茨城県の神栖、行方両市内で自然繁殖し計10羽のひなが生まれたことが21日、分かった。両市では昨年計6羽のひなが巣立っており、神栖市では今年も同じつがいが営巣。同日はひな8羽の検体採取や個体識別のための足環が装着された。関係者は「無事に巣立ってほしい」と期待を寄せた。

神栖市矢田部地区では、栃木県小山市の渡良瀬遊水地で生まれた「わたる」(雄4歳)と「のぞみ」(雌3歳)のつがいが営巣。波崎愛鳥会のメンバーが4月にひな4羽の誕生を確認し、観察を続けてきた。

同地区で21日に行われた作業には、兵庫県立コウノトリの郷公園の松本令以主任研究員をはじめ、茨城県日立市かみね動物園の獣医師、自治体関係者ら約20人が参加。作業員が高所作業車を使って人工巣塔(高さ約13メートル)に近づき、目隠しした上でひな4羽を捕獲した。

地上ではひなに足環を装着し、血液と羽毛の採取や体重測定を実施後、巣に戻された。性別はDNA検査で今後明らかにする。神栖市の別の場所でも2羽が誕生しており、来月にも足環が装着される予定という。

コウノトリは水辺生態系の頂点に立つ存在で、市環境課の担当者は「コウノトリが生息しているということは、神栖に餌が豊富にあるということ。これからも自然豊かな環境を保持していきたい」と話した。

この日は茨城県行方市内で生まれた4羽にも足環装着などを実施した。同市によると、巣の近くに雄がいなかったため、昨年と同じつがいかどうかは分からなかった。

コウノトリは東アジアに生息する大型の鳥。かつては日本各地で生息していたが、乱獲や環境悪化の影響で、1971年に国内の野生個体群が絶滅。現在は兵庫県や千葉県野田市などが放鳥活動を行っている。

兵庫県立コウノトリの郷公園によると、コウノトリは2024年3月末現在、全国で約370羽が確認されているという。神栖、行方両市では19年以降、千葉県や兵庫県などで生まれた個体が飛来し営巣。昨年は6羽のひなが巣立った。

© 株式会社茨城新聞社