5月23日で木村花さんの死から4年…母・響子さんはSNSの誹謗中傷について啓蒙活動の日々【あの人は今】

木村響子さん(C)日刊ゲンダイ

【あの人は今こうしている】

木村響子さん(47歳)

女子プロレスラーの木村花さん(享年22)の死から4年。母で元女子プロレスラーの木村響子さんは侮辱罪厳罰化とSNSでの誹謗中傷をなくすべくNPO団体を設立。各地を飛び回って、啓蒙活動にいそしんでいた。

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5月23日はひとり娘・花さんの命日だ。

「あの日でカラーの世界が終わってしまって、今もずっとモノクロの中で生きている感じですね。今年も命日にメモリアルマッチを後楽園ホールで開催しますが、花を愛してくれた人たちが集まって、温かい空間にしてくれる。その日だけはね、癒やされています」

現在は、SNSの誹謗中傷についての活動を行っている。

「2021年9月3日に『NPO法人リメンバーハナ』を花の誕生日に立ち上げました。活動は、全国各地で誹謗中傷防止条例の制定をお願いしたり、SNSの使い方に関する講演会を開いたり。ネットやいじめについて小・中・高校では授業で、大学ではオンラインで生徒と対話したり、絵本の読み聞かせをすることもあります」

この4年間で活動の成果も。

「侮辱罪の厳罰化が成立しました。そのほかでも、自分たちが活動に訪れた大阪府や佐賀県でSNSの新たな条例が可決されて、わずかな一歩ながらもかなえることができました」

今までの裁判費用は1000万円

一方、嫌がらせや誹謗中傷は今なお続いているという。

「花の名前でバイトを申し込まれて私宛てに連絡が来たり、高級レストランやホテルの予約を入れたり、ネットを使った嫌がらせが続いています。こうしたNPO活動に対しても『娘を使って金儲けしている』というコメントも散見しますが、講演会や興行の収益はすべて事務局の活動費に充てているので、私の儲けはありません。現在も裁判を抱えていて、判決を終えても開示請求するのに費用がかかっているし、(賠償金を)払ってくれない人もいますから赤字です。今までの裁判費用は1000万円くらいかかっていますから、考えると怖いですね」

講演会での対話で気づくことも多い。

「なぜひどいことを書き込んでしまうんだろう、という議題で、小学5年生の子が『SNSに取りつかれているから』って言ったんです。SNSには真実もあるけど、まやかしの側面もある。現代人は時間をSNSに費やしてしまって、実在する人とのコミュニケーションが不足しがちだけど、こっちがリアルなんだと気づいてほしい。自分のことを大事にしてくれる人の声を、大切にしてほしいと思います」

花さんが5歳のとき「子持ちのシングルマザー」として再デビュー

高校を中退して男女混合プロレス団体「FMW」に入門。退団後に東南アジアをひとり旅して、滞在先で出会ったインドネシア人の男性と結婚、20歳で花さんを出産し、20歳で離婚。花さんが5歳のとき、「子持ちのシングルマザー」の選手として再デビューした。

「花が3、4歳のとき、めっちゃ貧乏で、電気が止まっちゃったんですね。家にあったサンタのキャンドルに火をつけたら、クリスマスの音楽が流れて。花も一緒に踊って(笑)。お米を買うお金がなくて、すいとんを作ったら、『めっちゃおいしい!』って喜んで食べてくれたり“何でも楽しめる天才”でした」

花さんは18歳でプロレスデビュー。響子さんが引退するまでの1年間、母娘で現役レスラーだった。

「私は体の頑丈さと根性、経験とフィジカルで生き抜いたプロレスラーだったけど、娘がプロレスデビューして花道を入場したときに『あっ、この子はスターになるわ。才能があるな』って思わせる華がありました。小さい頃からダンスをやったりアイドルグループに入ったりして、カメラ慣れしていたから、撮影でも瞬時にポーズをとれちゃう。プロレスに限らず、世界で通用する何かがあったんじゃないかなって今でも思っています」

今年の大会名は「テレマカシー(ハート)」。インドネシア語で「ありがとう」を意味する。

「語源は、『あなたの愛を受け取りました』なんですって。愛を交換する日だって、私はそう解釈してます」

今年も、満開の花が咲く。

(取材・文=伊藤雅奈子)

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