【杉咲花さんインタビュー】 犯してしまった“失敗”の責任を取る。その姿を見捨てることはできない

Sugisaki Hana 杉咲花

映画「朽ちないサクラ」で、県警の広報職員・森口泉を演じる杉咲花さん。本来は捜査する立場にない泉が、親友の変死事件をきっかけに、独自に捜査を始める。

「泉は本質的なところで芯が太い人なのではないかと思います。怒りや疑問が出たときに、小さく火が灯るというよりも大きな炎になって煙がもくもくとあがるような人。暗闇に向かっていく姿は危なっかしく、泉の人間性が炙り出される瞬間でもある。泉が起こす行動というのは、正しいとか正しくないでは語りきれないんです。その心のうつろいや刃が研ぎ澄まされてゆくさまを大切に演じたいと思いました」

泉の“失敗”とは、親友を疑い、信じ切れなかったこと。

「私は、信じることは自分の都合であり、自分で責任を取ることでもある気がしています。たとえば相手が自分の思ってもみない行動をとったり、裏切られたと感じることがあったりしたとしても、それは自分がそのように相手のことを見ていただけで、相手はそんなに変わっていないかもしれないなと」

事件の真相に迫る泉は、やがて触れてはならない大きな闇にも近づいていく。

「ダイナミックなテーマのなかに、人間の心の機微が描かれています。泉が犯してしまった失敗に対して向き合おうとする姿勢を、人はどう見つめるのか。応援できたり好意的に見られるものではないかもしれないけど、私は彼女なりに責任を取ろうとする姿を見捨てることができないんです。観客の皆さまがどう捉えてくださるか、とても興味があります」

愛知県岡崎市周辺で桜の季節にオールロケで撮影された本作。作中を彩る桜はすべて本物だそう。

「ロケでお借りした蒲郡の桜が本当に美しくて、人生最高の桜でした。満開から少しずつやせていくさまをずっと見ていられて、なんてぜいたくな時間なんだろうと思いました。予定よりも1週間開花が早まったり、撮影が終わるころには桜が散ってしまうのではないだろうかとひやひやする場面もありましたが、本当に美しいシーンになって。とても恵まれた撮影でした」

杉咲花さんの“働く”インフラ

Q.キャリアを重ねる中でお仕事への意識の変化は?

変わったことは、自分の感覚を関わる方にシェアするようになったことです。最初は求められたことに精いっぱいこたえるのが俳優の仕事だと思っていましたが、役割やキャリアや年齢の垣根を越えたところで感じた本音や違和感をシェアすることで物語は深まっていくし、それは健全なことなんだとスタッフさんや共演者の方に学ばせていただきました。

Q.困難の乗り越え方は?

困難に直面したときはラッキーだと思うようにしています。仮にうまく乗り越えられなかったとしても、向き合おうとすることが大事だし、その姿勢は周りにいる人たちもきっと見てくれていて、自分を信頼してくれるきっかけになるのならば、それはなんてラッキーなことなんだろうって。

【Check】

「朽ちないサクラ」

6月21日(金)全国公開

(C)2024 映画「朽ちないサクラ」製作委員会

柚月裕子さんの警察サスペンスミステリー小説を映像化。県警の広報職員・森口泉(杉咲花)は、親友の新聞記者・千佳が自分との約束を破ってスクープ記事を出したのではないかと疑う。身の潔白を証明しようとした千佳は、1週間後に変死体で発見。自責の念に駆られた泉は、親友の弔い合戦に身を投じ、触れてはならない大きな闇と、真相に近づいていく。

【PROFILE】

1997年、東京都出身。主な出演作に、ドラマ「花のち晴れ~花男Next Season~」、NHK連続テレビ小説「おちょやん」、映画「法廷遊戯」「市子」「52ヘルツのクジラたち」など。現在、主演ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(毎週月曜22:00、カンテレ・フジテレビ系)が放映中

取材・文/高木明日美(シティリビング編集部)、撮影/大川晋児、ヘアメイク/豊田まさこ(dynamic)、スタイリスト/中澤咲希

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