40代夫婦二人暮らしです。家計をコントロールして生活費を「月30万円」に抑えたので、これなら老後も年金だけで暮らしていけそうでしょうか?

平均収入と平均支出を比較

まず平均収入と平均支出を比較して、老後に備えられるだけの資金が用意できるのかについて解説します。家計が抱える問題は収入額が大きく関係しますが、支出額を抑えることも、同じくらい大切です。

平均収入

総務省統計局が発表する「家計調査」によると、2024年3月時点の実収入(二人以上の勤労者世帯)は、1世帯あたり51万3734円です。この数値は前年同月比で実質マイナス0.1%となっており、4年連続で減少傾向にあります。

平均支出

同調査の二人以上世帯における消費支出においては、2024年3月時点で1世帯あたり31万8713円となっています。この数値は前年同月比で実質1.2%の減少であり、過去4ヶ月にわたって支出が抑えられている傾向です。今回の事例にある月30万円というのは、平均的な支出額であるようです。

老後に必要となる金額は?

同じく総務省統計局の「2023年家計調査報告[家計収支編]」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯における総支出額は、非消費支出も合わせて28万2497円でした。

日本年金機構によると、令和6年度における夫婦二人分の厚生年金の標準的な年金額は、老齢基礎年金も含めて23万483円とのことです。上記支出額を例として、老後の収入が年金のみの場合、支出に対して毎月5万2014円の不足分が発生します。

年間で62万4168円、65歳から85歳までの20年だと1248万3360円不足する計算となります。

仮に現在が40歳として、老後に向けて貯蓄を始めた場合、毎月5万円貯金するだけでも65歳までに1500万円貯まります。老後の収入の不足分は貯蓄などから補う必要があるため、平均値に基づく試算通りであれば、月々5万円でも貯金ができれば、25年で上記の不足分を賄える計算です。

前述した平均収入ほどの月収があり、毎月の支出を30万円に抑えられているのであれば、月々5万円の貯金はそこまで難しい額ではないと考えられるでしょう。

ただし、これらの数値はあくまで平均値であり、家計の状況やライフスタイルなどはそれぞれの家庭で異なります。統計的な平均額が自分たちにとって十分な額とは限らないため、貯蓄するうえでは目標に沿った金額を定める必要があります。

老後資金を準備するときに考慮すべきポイントは?

老後に備えて毎月いくらあればいいかはそれぞれの生活水準によって異なります。例えば「老後をリゾート地で悠々自適に暮らしたい」といった目的があるなら、目標額を高く設定する必要があるでしょう。

さらに目標とは別に、以下の要素も含めて老後資金を準備するとよいでしょう。

昨今の物価高を考慮

近年は、コロナ禍の影響や国際情勢の不安定化に伴う「インフレーション(物価高)」が相次いでいます。今後も同様のことが起きると、準備した老後資金だけでは足りないかもしれません。

対策としてはインフレーションに強いとされる資産運用が効果的です。現金と違って投資による資産運用はインフレ対策に有効なため、老後資金として資産運用を始めるのもひとつの手段です。

万が一の支出にも備えよう

老後資金を蓄える際は毎月の生活費だけでなく、万が一のトラブルに備えられるまとまったお金も考慮しましょう。例えば、自宅の老朽化に伴う不具合や故障が起こった場合、修理費やリフォーム資金が必要です。また、病気になった際の治療費や入院費なども備えておく必要があるでしょう。

生活費分だけだと家計を圧迫する可能性が高いため、老後資金の準備は「生活費+万が一の予備費」で考えるとよいでしょう。

目標に合わせた金額設定が必要

家計の収支は世帯の人数や家庭の状況など、さまざまな条件によって異なります。老後資金を準備するうえでは、現在の収支と老後のライフスタイルを比較して、必要な目標額を試算しましょう。

出典

総務省統計局 家計調査報告 -月・四半期・年- 家計調査(二人以上の世帯)2024年(令和6年)3月分(2024年5月10日公表)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編] 2023年(令和5年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯)図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2023年-(18ページ)
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について 令和6年度の年金額の例(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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