天地人など、「衛星利用ビジネス検定」で共創–衛星データを読み取ってビジネスに生かす

天地人(東京都港区)やsorano me(東京都新宿)、慶応大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年12月から「衛星利用ビジネス検定」について共創活動を始めている。2024年5月22日に発表した。JAXAの新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みで進めている。

天地人とsorano meが衛星データ利用人材拡大を目指して開発を進めている教材と検定システム開発に、慶応大学 大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(慶応大学SDM)が教育研究プログラムの設計ノウハウ、JAXAの衛星データを事業者の提供価値に変換するノウハウを組み合わせて、衛星利用ビジネス検定の事業化を目指す。最初のステップとしてベータ版検定を試験的に開催する。

日本を含めた世界各国で衛星の数が増加するにつれて衛星がもたらすデータの量も増加している。だが、衛星データからどんなことを読み取れるのか、衛星データを解釈して利用できる人材が不足。衛星データの価値をエンドユーザーにまで届けられていないことが現状と4者は説明する。

天地人とsorano meは、衛星データ利用人材を拡大させるための教材と検定システムの開発に着手することを2022年12月に発表した。天地人は衛星データ利用の採用分野や活用事例が拡大する中で技術を担う人材の育成に注力。sorano meは人材基盤開発事業「ソラノメイト」を通じて、業界全体を底上げするために、ほかの業界から宇宙業界への挑戦を志す個人を呼び込み、宇宙業界の現場で活躍する人材に取り組んでいるという。

慶応SDMは、東京大学や東京海洋大学とともに「社会課題解決型人材育成プログラム」を10年程度進めてきた。その経験に加えて、国内外のさまざまな社会課題に衛星データを活用する研究開発や事業化をシステム思考やデザイン思考に基づいて取り組んできた知見があるという。そうした経験や知見に基づいて教育研修プログラムを設計、検定内容の具体化に貢献するとしている。

JAXAは、J-SPARCの共創で培ってきた「JAXAの内外から必要な技術を集め、事業者の提供価値に変換すること」のノウハウをまとめ、衛星データを利用したビジネス創出を目指す際に必須となる基本的なマインドセットとして、衛星利用ビジネス検定を通して宇宙ビジネスのプレイヤーに伝えることで地に足がついた衛星利用ビジネス創出につなげることを目指すと説明する。

衛星利用ビジネス検定の受験者として、現場をもつビジネスパーソン、地域を守る自治体職員、地球規模の課題に取り組む学生を想定。検定受検をきっかけに衛星データ利用を学び、その成果を武器にさまざまな分野で活躍してもらうことを期待すると解説。衛星利用ビジネス検定がもたらすメリットとして以下のようなものを期待している。

  • グローバル事業に取り組む企業が、発展途上国の経済分析の手法を探しているときに、衛星データから情報を得ている事例を目にした。どこから手を付けて良いか分からず、具体的な行動に至っていなかったが、検定に臨むことで衛星データの長所と短所を含めた特徴を理解でき、衛星から取得できる夜間光データを情報ソースのひとつとして活用することを決めた
  • 自治体の防災担当者が、他の自治体や事業者ではどのように衛星データが活用されているかの事例を知った上で、自分の自治体にはどんな使い方が適しているか判断できるようになった
  • 気候変動対策に取り組む学生が、地球の裏側での変化を知るために、衛星データを活用し、地球規模での影響度合いを把握できた

プロトタイプとしてのベータ版検定を2024年6月ごろをめどに試験的に開催する。ベータ版では本番の検定と同じように、設問に回答し、衛星利用ビジネスに関するスキルを評価する。ベータ版で得られたフィードバックから検定内容を充実させる。2024年内をめどに協会を設立し、衛星利用ビジネス検定の開始を目指す。

日本でも宇宙に関連する予算が増加しているが、人材が足りないという課題が顕在化していると指摘されている。人材育成は一朝一夕では実現できず、自分ごととして取り組むプレイヤーの育成と事業化などの持続可能な仕組みが不可欠と説明。今回の共創で教材や検定システムの開発を通じて、衛星データの使い道を広く世の中に啓蒙するとともに衛星データ利用人材の拡大を狙う。

今回の共創での役割(出典:JAXA、天地人、sorano me、慶応大学)

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