「長崎で稼ぎ、住む」 好循環に期待 平家達史・長崎市政策顧問(経済再生担当)【インタビュー】

「『稼ぐ』と『人材』で経済再生に取り組む」と話す平家氏=長崎市役所

 戦後、長崎市の経済は水産業から鉱業(石炭)、造船業とリードする産業の主体が変化してきた。この間、長崎県の名目総生産(GDP)ベースで見ると、1995年をピークに、その後は振れを伴いつつもマイナス成長に転じている。市も同じ状況と考えられる。
 足元の景気は緩やかに回復しているが、長崎市は他都市を上回る急速なペースで人口減少・少子高齢化が進み、「課題先進市」と言える。特に生産年齢人口(15~64歳)の減少が経済成長の制約になることが懸念される。
 長期のマイナストレンドを断ち切るため、「経済再生」の中で「稼ぐ」と「人材」を掲げた。まちも市民も稼げるためには人材が必要。地元で育てると同時に外からも呼び込まなければならない。
 まずは観光を大きな柱としたい。元々、見て、食べて、体験する観光資源はいくつもあるが、十分に整理されていない。かつては団体旅行がメインだったが、今は個人客の割合が圧倒的に多い。多岐にわたるニーズに応えられるよう、観光資源をいったん棚卸しした上で、付加価値の高いサービスや商品に再構築して提供しなければならない。そうすればおのずと生産性も向上するだろう。
 例えば、長崎は水産業が盛んで魚がおいしいと言われるが、十分に認識されていない。単に魚としてではなく、観光客に人気がある「すし」として提供すれば認知度が向上し、単価も上がる。「すしと言えば長崎」というイメージが定着するような提供方法と戦略的なプロモーションが必要だ。
 造船業も大切な「柱」だ。これまでは価格競争で中国や韓国に負けていたが、今後は環境対策で船の燃料について水素、アンモニアへと転換が求められ、開発競争になる。そうなれば長年、三菱重工業長崎造船所を中心に数々の船を建造してきた歴史がある長崎は強い。新たな動力源を船に転用する研究で三菱や長崎が再び世界をリードできる可能性はあると思う。その延長線上に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」もある。将来的には市内のバスやタクシーも水素で走るといった構想にもつながり、その方向への民間の取り組みを支援することも大切だ。長崎市が世界のトップランナーになれる分野だ。
 都市型水産業・農業の推進にも注力したい。長崎市はまちなかのすぐそばに漁場があるので取り組みやすい。担い手創出のため地元の学生が水産業に触れる機会をつくるとともに、週末だけ漁師、定年後の漁師、半農半漁といった年齢や働き方に制約がない形にして参入しやすい環境を整えたい。
 長崎だからこそできる事業に取り組み、長崎で稼げるということになれば、長崎を選んで住む人が増加するという、好循環を生むと期待している。

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