情報BOX:AI特化パソコンとは何か

[21日 ロイター] - 人工知能(AI)機能を高めた技術で一新を遂げた「AI特化パソコン」が話題を呼んでいる。パソコン業界では過去数年間の右肩下がりから反転するとの期待が高まっている。

◎「AI特化パソコン」とは何か?

開発した米マイクロソフトなどによると、従来の端末よりもデータ処理は迅速で、自動会話プログラム「チャットボット」を含めて、より多くのAI機能を直接扱うことができる。つまり、米オープンAIの「チャットGPT」など大抵のAIアプリを利用する際にデータセンターのクラウドに依存する必要がないということだ。

しかも、AI特化パソコンの中には、入力データをアルゴリズムで分析し結果を表示する機能を高める「AIモデルのトレーニング」の補助さえ可能なタイプもある。このトレーニングは通常サーバー上で行われる。大がかりな計算を行う能力が必要なためだ。

現在、生成AIをメール送信から休暇計画まで、あらゆることに使う人が一段と増えている。このため、パソコンメーカーは今回発表の新機能が購入希望者を引き寄せることに寄与すると期待している。

調査会社カナリスの推計では2025年にAI特化パソコンの出荷台数は1億台を超え、全パソコン出荷台数の40%を占めるという。

◎どのような技術が搭載されているか?

AI特化パソコンには、データ分析から予測や表示までの機能(AIワークロード)の大半を担うNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)と呼ばれる特殊なデータ処理装置が搭載されている。

NPUは中央演算処理装置(CPU)や画像処理装置と連携し合って複雑なタスクをこなすほか、処理速度を上げたりAIアシスタントなどのアプリを強化したりする。

◎一般に買える端末機種は?

マイクロソフトが20日発表したAI「コパイロット+」ブランドの端末新製品は、米デル・テクノロジーズやHP、韓国サムスン電子、中国レノボ・グループ、台湾華碩電脳(エイスース、ASUS)、宏碁(エイサー、Aser)が市場投入を発表済みだ。

マイクロソフトはノートパソコン「サーフェス・ラップトップ」とタブレット端末「サーフェス・プロ」の新製品を発表した。いずれも999ドルから始まる価格設定で、コパイロット+端末の中で最も手が届きやすい機種の一部。レノボの「ThinkPad E14 Gen6」は1699ドルからとみられ、最も高い部類に入る。

◎何か懸念はあるか?

マイクロソフトの新しい主力機能「リコール」は何点かプライバシーに関する懸念を引き起こしている。同社の「コパイロット+(プラス)PC」のAIアシスタント内部にあり、端末で行った過去のどんな使用歴でも検索し、もう一度知ることができる。どういうサイトを閲覧したか、どんなボイスチャットを交わしたのかなど一切が分かるわけだ。

このため、ソーシャルメディア利用者の間では、スパイ活動が可能になりかねないとの懸念が広がっている。電気自動車(EV)大手テスラなどを率いるイーロン・マスク氏も警戒感を表明している。

調査会社インターナショナル・データ・コープ(IDC)のアナリスト、ライアン・オリアリー氏は、新機能「リコール」に関する大きな懸念は、使用歴などのデータが端末に個別に保存されるか、1カ所に集約して保存されるかだと指摘した。仮にマイクロソフトがデータを保存するならば「重大なプライバシーリスク」が生じるだろうと警鐘を鳴らした。

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