農林中金が資本増強へ、海外金利高が打撃 今期5000億円超の赤字見込み

Tomo Uetake

[東京 22日 ロイター] - 農林中央金庫(農林中金)の奥和登理事長は22日の決算会見で、1兆2000億円規模の資本再構築を関係者と協議していることを明らかにした。海外金利高が外債投資への打撃となり運用収益が大幅悪化。財務の健全性確保と中期的な収益強化のためポートフォリオの立て直しを図る考え。

今期(2025年3月期)の連結純損益は、リーマンショックの影響で赤字となった2009年3月期以来となる5000億円を超える赤字となる見込み。

転換条項付き劣後ローン7000億円を中核的自己資本(CET1)に振り替えることで質の向上を図りつつ、劣後ローンで5000億円を調達する計画だ。現在、農業協同組合(JA)などの会員と協議を進めているという。

海外金利の上昇を主因に、農林中金の2024年3月期の有価証券評価損は1兆7698億円と、23年3月期の9462億円から大幅拡大。このうち債券の評価損は2兆1923億円で、23年3月期の1兆7298億円から拡大した。

奥理事長は「外債運用の影響が大きかった。一定の評価損を抱えても持ち堪えられると考えたが、想定を超える(米)利上げと金利の高止まりだった」と振り返った。

その上で「今回の資本の再構築は投資余力やポートフォリオの入れ替えをするための計画。また減損の赤字ではなく、低利回りの債券を売って資産を入れ替える過程で一定の売却損、ひいては赤字を覚悟しているという内容だ」と説明した。

ポートフォリオの入れ替えについては、欧米の国債を中心に低利回りの資産を売却し、債券・クレジット・株式などの資産への入れ替えを幅広く検討する。会見に同席した常務執行役員の北林太郎氏は「日本国債もワン・オブ・ゼム」と述べて、投資先の候補であるとの考えを示した。

責任問題について、奥理事長は「責任を痛感しているが、対処としては職務を全うする方法を選択したい」とし、続投する考えを示した。報酬の減額は検討しているとした。

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