フル出場のMVP眞城美春とロングボール合戦、決勝戦のキーパー起用【U17アジア杯2位リトルなでしこ「北朝鮮戦の敗因」と「W杯への希望」】(2)

ライバル北朝鮮に敗れたサッカーU-17日本女子代表。何が足りなかったのか?(写真はイメージです) 撮影/中地拓也

「リトルなでしこ」こと、サッカーU-17日本女子代表が、アジアでの戦いを終えた。惜しくも連覇はならなかったが、未来につながる輝きを放った。U-17女子アジアカップでの戦いぶりを、サッカージャーナリスト後藤健生が振り返る。

■日本が反撃に移れなかった「最大の原因」

後半、日本が反撃に移れなかった最大の原因は、北朝鮮の圧力を恐れてしまったことだ。

いや、後半だけではない。前半、日本のパスがつながっていた時間帯にも決定的なチャンスが作れなかったが、それは日本もロングパスに頼る場面が多かったからだ。

もちろん、このチームは、最終ラインの太田美月や牧口優花からのロングフィードからも得点につなげられるチームだったが、やはり日本の基本はパス・サッカー。パスで相手を押し込んだ中で、ロングボールを使うから効果的なのだ。

だが、この試合では日本もロングボール頼りになってしまったため、日本らしいチャンスができなかった。いわば、北朝鮮のやりたいサッカーにつきあってしまった形だった。

その最大の要因は、やはり序盤戦で押し込まれたことで、メンタル的に受け身になってしまったことなのだろう。そして、後半はいきなり失点したことによって、落ち着いて戦うことができなくなってしまった。

■積極的に「ローテーション」を使った日本代表

それだけではない。決勝戦はこの大会の5試合目。中2日で5連戦で、毎日気温が30度近くあり、湿度も高い環境だ。疲労がたまっているのは当然。日本の選手たちの動きは重そうで、まったくキレがなかった。それは、対戦相手の北朝鮮も同じとはいえ、少なくとも本来のパフォーマンスができなかった原因の一つといえるだろう。

日本代表は、どんなカテゴリーの大会でも積極的にローテーションを使って戦う。

U-17女子日本代表の白井貞義監督も同じだった。準決勝の韓国戦では、途中交代でGKの永井愛理を投入したことにより、帯同した全23選手をピッチに立たせたし、準決勝から決勝でも先発を3人変更した。

一方の北朝鮮は、基本的にほぼ固定メンバーで戦った。準決勝から決勝でも先発を変更したのは1人だけだった。

日本チームはローテーションを使って戦うことによって、体力的な負担を分散することができ、連戦の最後になる決勝戦では優位に立って戦うことができる。先日のU-23アジアカップなどは、まさにその有利さが決勝での勝利につながった。

だが、毎試合のようにメンバーを変更することには当然リスクも伴う。寄せ集めである代表チームなだけに、コンビネーションを高めるためにはなるべく同じメンバーで戦ったほうがよいだろう。とくに守備面では、連係が非常に重要なので、前線に比べればメンバー固定で戦うことが一般的だ。

■後半開始早々の失点は「連係の乱れ」が原因か

実際、今回のU-17女子代表でもDFラインは比較的、固定的だった。右サイドバックは3戦目の中国戦の途中から福島望愛が起用された。それまでは、左のアタッカーだった福島を右サイドバックで起用したのだ。センターバックは決勝で先発した太田と牧口。それに、決勝戦でも途中交代で出場した朝生珠実の3人が交代で起用された。そして、左サイドバックは5試合中4試合、鈴木温子がプレーした。

ただ、決勝戦ではGKとして、それまでの主力だった福田真央に代わって坂田が起用された。坂田は2戦目のオーストラリア戦に出場しただけで、他の3試合では福田がプレーしていた。

決勝戦、後半開始早々の失点場面ではGKの坂田が一瞬遅れて飛び出し、相手FWにプレッシャーをかけられず、しかもゴールをがら空きにしてしまった。坂田が久しぶりのプレーだったことが、このDFとの連係が乱れの原因となった可能性もある。

もう一つ、今大会での選手起用を振り返ってみると、ボランチの2人、眞城美春と榊愛花はほぼ固定で使われていた。

日本代表は準優勝に終わったものの、MFの眞城は大会MVPに選出された。決勝戦でも、北朝鮮の激しいチェックを見事にかわしてボールをキープしてパスを供給しており、テクニックのレベルは群を抜いており、しかもチーム最多の4得点。眞城のMVP選出は当然のように思える。

まさに、今大会での日本チームの攻撃の中心としての存在感を発揮した選手だ。

その眞城は初戦から全試合で先発し、初戦タイ戦の85分に平川と交代しただけで、他の全試合でフル出場していた。そして、眞城とコンビを組む榊も2戦目のオーストラリア戦を除いて4試合に出場し、4試合ともにフル出場していた。

© 株式会社双葉社