「会ってみたい」SNS型投資詐欺&ロマンス詐欺の被害が秋田県内でも急増 実際のやりとりを基に“手口”を解説

人々の財産を狙う詐欺の被害が急増している。秋田県内ですでに2億円を超える被害が確認されているのが「SNS型投資詐欺」と「ロマンス詐欺」だ。私たちの生活に欠かせないスマートフォンから忍び寄る魔の手。1月に新NISAが始まるなど投資への関心が高まっていることを逆手に取り、財産が狙われている。

“過去最悪”…詐欺の被害急増

秋田県内の2023年の特殊詐欺の被害額は、過去最悪となる5億円超。2024年は、4月末時点ですでに2億円を超えている。

SNS上で投資に関する広告を開いたことをきっかけに、有名投資家などからもうけ話を持ち掛けられ、利益が出ていると信用させて現金をだまし取る「SNS型投資詐欺」。

さらに、恋愛感情や親近感を抱かせて投資や渡航費用などの名目で現金をだまし取る「ロマンス詐欺」。
被害が急増しているこれら2つの詐欺について、被害者と犯人側の実際のやりとりなどを基に、手口を詳しく紹介する。

趣味の話などから始まったやりとりが…

警察は、これら2つの詐欺について、特殊詐欺と明確に線引きしている。

「オレオレ詐欺」「架空料金請求詐欺」などの手口がある「特殊詐欺」は、不特定多数が対象であるのに対し、被害が急増している「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」は、人間関係を構築した“特定の1人”が対象だ。

秋田市の60代男性が「ロマンス詐欺」で現金65万円をだまし取られた被害を例に、特徴を見ていく。

事の発端は2月25日。秋田市の60代男性が、自身のインスタグラムのアカウントを自称韓国人の「ローラ」なるアカウントからフォローされたことでやりとりが始まる。

ローラ:
はじめまして、よろしくお願いします
男性:
はじめまして、こちらこそよろしくお願いします
ローラ:
あなたの車はかっこいいですね。よく釣りに行きますか?
男性:
サーフでのヒラメという魚釣りに5月から11月までです
ローラ:
すごいですね。でも安全にも気をつけてください

趣味の話や身の上話から始まったやりとり。

ローラ:
私は韓国人です。日本に来て1年になりました。私たちは友達になれます
男性:
よかったら友達になりたいです

最初の接触から約1週間後、ローラの指示で無料通信アプリ「LINE」でのやりとりに移行する。

男性は、ローラから「4月になったら会ってみたい」などのメッセージを受け取り、ローラに対して好意を抱くようになる。その後、暗号資産に関する投資話を持ち掛けられる。

ローラ:
50万円なら一緒に旅行に行く夢を一歩近づけてくれますよ。私たちが旅行するシーンを夢見ていました。潜水を教えてあげます。潜水はとても楽しかったですよ

男性は、インターネットバンキング機能を利用し、最終的に個人名義の口座に3回に分けて現金65万円を振り込み、だまし取られた。

信用を得るための様々な仕掛け

「県民の財産をむさぼる犯人を絶対許しません」と語気を強めるのは、秋田県警察本部生活安全部で安全・安心なまちづくりに取り組む若松秀樹対策官だ。

若松さんは、半月弱の期間に交わされたSNS上でのやりとりについて、次のように指摘する。

秋田県警 安全・安心まちづくり支援対策官・若松秀樹さん:
実は男性は、ニュースを通じてロマンス詐欺を知っていたという。そのため最初に投資話を持ち掛けられた時、誘いを断り連絡を絶ち切っている。ところが「むげに断ってしまい相手を傷つけてしまった」と思った上、「4月になったら会ってみたい」とメッセージがあったため、本当に会えるかもしれないと思い直し、再び連絡を取ってしまった

被害者から信用を得るための、犯人側による様々な仕掛け。男性の口座には、暗号資産の投資で出た利益分として約1万5000円が実際に入金されたという。

秋田県警 安全・安心まちづくり支援対策官・若松秀樹さん:
“利益分の出金”は、単に犯人がだまし取った金の一部を振り込んでいるだけ。相手側の「私が詐欺だと思いますか」との問いかけに、男性は「疑ったりしてごめんなさい」と、この話を信用してしまっている

さらに追加で投資を持ち掛けられた男性に「恐怖」という感情が湧き上がる。

秋田県警 安全・安心まちづくり支援対策官・若松秀樹さん:
相手は「私を信じてくれないのが一番嫌いだから」として、さらに好意の感情を高めようとしている。男性は、追加投資せずに相手に嫌われることや、出金方法を教えてもらえなくなることが怖くなり、さらに投資してしまった

県警が分析 被害に遭った3つの典型例

県警が分析した、被害の典型例を3つ紹介する。

1つ目は、被害に遭う人の多くがフェイスブックやインスタグラムなどのSNSを利用しているが、不特定多数からの友達申請を拒否しない設定をしている。氏名などを偽った犯人側から友達申請が届き、ダイレクトメッセージのやりとりへと発展する。

2つ目は、被害者はSNSで「投資」などのキーワードで検索して、様々な書き込みを見ることが多い。するとSNSには「投資必勝法」といった広告が表示されるようになり、広告をクリックしてやりとりが始まる。

3つ目は、被害者がマッチングアプリを利用しているケースだ。犯人側が被害者への接触を試み、最終的にはLINEでのやりとりを持ち掛けてくる。そして人間関係を築き上げ、多額の金をだまし取る。

秋田県警 安全・安心まちづくり支援対策官・若松秀樹さん:
SNSで知り合った人からの投資話には、絶対に応じないでください。皆さんの大切な資産です。送金、入金前に家族や友人など周囲の人に相談してください

“自分だけが必ずもうかるうまい話はない”。これに尽きるのではないだろうか。

(秋田テレビ)

© FNNプライムオンライン