岸田首相、資産運用特区「創設に加速」 モルガンS投資家イベントで

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Miho Uranaka Anton Bridge

[東京 22日 ロイター] - 岸田文雄首相は22日、米モルガン・スタンレーが都内で開催した世界の機関投資家向けコンファレンスで、政府が検討を進めている「金融・資産運用特区」について、創設を加速させる意向を示した。来週、特区候補の4都市と面談し、構想を具体化する。

岸田首相によると、企業の年金基金や保険会社、学校法人などのアセットオーナー(資金の出し手)に対して、一層の機能強化を図る。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済組合などの公的なアセットオーナーには、政府が夏にも策定する行動規範「アセットオーナー・プリンシプル」公表後に、運用力強化に向けた取り組み方針を開示する。

秋には機関投資家などを招く「Japan Weeks(ジャパンウィークス)」を開催、首相は「包括的な改革を、投資家との対話を通じて進めていくことが重要」との考えを示した。

モルガン・スタンレーのゴクール・ラロイア・アジア最高経営責任者(CEO)はコンファレンスでロイターなどのインタビューに応じ、日本は「経済が非常に大きく、洗練され、成熟しているにもかかわらず、(資産運用業界は)米国などと比較して非常に小さい。細分化されている」と指摘。「業界の統合とマクロ的な追い風が業界を前進させる」、「成長の余地は十分にある」との見方を示した。

特区の創設は、23年9月にニューヨークで開かれた投資家向け講演で岸田首相が明表明した。規制緩和などで海外の資産運用会社の新規参入や業務拡大を促す方針で、福岡、大阪、東京、札幌の4都市が名乗りを挙げている。6月上旬に特区のパッケージを公表する。

日本での対面による機関投資家向けのコンファレンス開催はモルガン・スタンレーとして初めてで、きょうから2日間の日程で行う。日本株への関心が高まる中、欧米・アジアから約800の機関投資家が参加し、企業のIRを含めた参加人数は1800人に上る。

同社の株式ストラテジスト、ジョナサン・ガーナー氏はコンファレンスで、日本はデフレからインフレへの転換点にあると指摘。賃金、物価、生産性の向上と企業のROE(自己資本利益率)の上昇を踏まえると、防衛的に現金を維持することはもはや論理的ではなく、今後5ー10年で家計資産の株式の比率が現在の約10%から「2倍になることは現実的」と、日本株投資の魅力を説明した。

モルガン・スタンレーは三菱UFJフィナンシャル・グループの持分法適用会社で、日本では両社で2社体制の証券合弁事業を展開している。

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