【もっこり発案者を特定?】『シティーハンター』で再注目! 世界の共通語「もっこり」のルーツを聞く

Netflixにて実写ドラマ化され、再びブームを巻き起こしている『シティーハンター』。80年代に発表された原作の煌びやかな魅力を存分に引き出しつつも、スピーディーな展開や華麗なアクション、今をときめく俳優陣の好演によって現代的な映像作品に仕上がっていると評判だ。

中でも活目すべきハイライトは、主演の鈴木亮平が自ら振り付けし、鍛え上げられた肉体美を持って挑んだ「もっこりダンス」だろう。目が覚めるような気持ちの良い脱ぎっぷり、健康的なもっこりのシェイプ、見えそうで見えないスリリングな演出など、セクシー面でも抜かりないそのダンスは、YouTubeでも225万回再生を突破する大人気コンテンツとなっている。

ところで、股間の膨らみを「もっこり」と表現したのは、どうやら『シティーハンター』が初めてではないようだ。Wikipediaの記述では「日本で最初に使われた時期は不明」だが、1983年に『週刊少年ジャンプ』で連載が開始された徳弘正也の漫画『シェイプアップ乱』で認知度が高まったとされている。その後、1985年に連載開始した『シティーハンター』や、同時期におニャン子クラブが出演していた『夕やけニャンニャン』などで「もっこり」は多用され、一般的に知られるようになったらしい。さらに、『シティーハンター』が日本国外で翻訳された際に、適当な訳語が見つからなかったことから、そのまま「MOKKORI」と書かれたことで、世界共通のグローバルな表現になったのだという。

世界中の人々を元気にする不思議な言葉「もっこり」は、いったい誰が考えたのだろうか? なんとリアルサウンドブック編集部では、その発案者だという人物を特定している。1980年代からハードコア・パンク界隈で活躍しているDEATHSIDE/FORWARDのボーカルを務めるISHIYA氏がその人だ。自らの半生と世界各国でのライブ経験を綴った書籍『Laugh Til You Die 笑って死ねたら最高さ!』(小社刊行)に、はっきりと「もっこり」のルーツが記されているのである。

さっそく、ISHIYA氏に話を聞いてみよう。

ーー『LaughTilYouDie笑って死ねたら最高さ!』に、ISHIYAさんが「もっこり」の発案者だと書かれていました。間違いないですね?

ISHIYA:はい。「もっこり」は俺のラジオへの投稿から始まりました。中学の時なので、1980~1981年くらいですね。当時、ラビット関根(関根勤)と小堺一機が深夜にやっていたTBSのラジオ番組『夜はともだち』に電話投稿をしていて、おそらく「聞いて聞いて電話大賞」か「るんるんダイヤル」というコーナーで、男性がタイツを履いたときの股間を「もっこり」と表現した投稿をしたところ、ラビット関根がめちゃくちゃ気に入ってくれたんです。それまでも色々と投稿はしていましたが、「もっこり」はその日の投稿の大賞に選ばれて、TBSからステッカーなどの賞品が届いたのを覚えています。それからラビット関根がいろんな場面で「もっこり」と言うようになって、世の中にも広がっていきました。

ーーラビット関根はその後、宇津井健による全身タイツの特撮ヒーロー『スーパージャイアンツ』の姿などを「もっこり」と表現したと書かれていました。

ISHIYA:そうですね。そこから『シティーハンター』とか、いろんなところで「もっこり」という言葉が使われて、流行した印象です。

ーー「もっこり」は今や世界でも認知されている魔法の言葉です。そして、ISHIYAさんはハードコア・パンクのアーティストとして世界中でライブをされています。海外でも「もっこり」が共通語となったことについて、感想を教えてください。

ISHIYA:ハードコアパンクスと「もっこり」というギャップが、恥ずかしくはありますね。真面目なメッセージをライブや歌詞で訴えているので、真実味がなくなるんじゃないかと、そこが心配です(笑)。ネットなどがない時代に、ここまで広まったのはすごいことだと思いますが、次の海外ライブで「MOKKORI」という歓声が飛ばないことを願うばかりです(笑)。

「もっこり」の発案者は、ジャパニーズ・ハードコアの伝道師として世界中にポジティブなメッセージを伝え続けている男だったーー。国境を越えて「もっこり」が広がっていったのは、もしかしたら必然だったのかもしれない。なお、ISHIYA氏の新刊『静岡ハードコア』と『新装版 関西ハードコア』(risktrash*)も好評発売中なので、こちらもあわせてチェックされたい。

(文=松田広宣)

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