新NISAもiDeCoもやっていますが、同じ額を入れるよりも、どちらかの金額を多くしたほうがお得ですか?

NISAとiDeCoの比較ポイント

図表1は、NISAとiDeCoの特徴を簡単にまとめたものです。

図表1

ここで注目したいのは、以下の点です。

__・年間の投資(拠出額)に限度があり、iDeCoのほうが大幅に少ないこと
・NISAには総枠の限度額があること
・投資方法が異なること
・iDeCoは掛金が全額所得控除になること
・お金を受け取るとき、NISAは預金と同じ扱いで課税されないが、iDeCoは所得扱い(年金方式=雑所得、一時金方式=退職所得)で優遇税制ではあるものの課税される可能性があること
・iDeCoを受け取るとき、年金方式なら「公的年金等控除」を、一時金方式なら「退職所得控除」を受けられること__

iDeCoは節税効果があり、NISAは複利効果が大きい

以上のことから、NISAとiDeCoで運用成績に差がないことを前提とすると、iDeCoは掛金が全額所得控除になる分、掛金を拠出している期間は手取りが増える(所得税が減る)ため、NISAに比べて得であるといえそうです。

しかし、iDeCoは受取時に所得税が課税される可能性があります。年金方式で受け取る場合は雑所得となり、一時金方式で受け取る場合は退職所得になります。

それぞれ公的年金等控除、退職所得控除を受けられますが、所得税を納付することになれば、結局は課税の繰り延べをしたにすぎないともいえます。拠出時の節税分と受取時の課税分を比較して、前者のほうが多ければ、節税できた分、iDeCoのほうが得だといえます。

また、iDeCoの場合、投資方法が「積み立て」となり、一括投資ができるNISA(成長投資枠)と比較して不利になる可能性があります。例えば、以下のケースを比較してみます。前提として、どちらも年2%で複利運用するものとします。

__〈ケース1〉毎年24万円ずつ積み立てながら、10年間運用した場合
〈ケース2〉1年目に240万円投資し、10年間運用した場合__

〈ケース1〉の10年後の金額は、以下のとおりです。

24万円 × 10.95(年金終価係数)= 262万8000円

一方、〈ケース2〉の10年後の金額は、以下のとおりです。

240万円 × 1.219(終価係数)= 292万5600円

投資額(掛金)の合計は、どちらも240万円です。しかし、投資のタイミングの違いにより、得られる「複利の効果」にも差が生じます。この点からいえば、NISA(成長投資枠)のほうが得だといえます。

まとめ

「NISAとiDeCoでは、どちらが得か」と聞かれたら、「目的に応じて使い分けましょう」と答えるのが一般的でしょう。NISAの目的が資産形成であるのに対し、iDeCoの目的は私的年金だからです。

NISAもiDeCoも運用益が非課税になるため、どちらも得な制度です。そのうえで、どちらが得かを考えるのであれば、節税効果を取るか、複利効果を取るか、ということになるでしょう。

ただ、「同じ額を入れるか、どちらかの金額を多くするか」で迷われているのであれば、まずはiDeCoを掛金限度額まで利用するのがよいのではないでしょうか。iDeCoで得られる節税効果(所得控除)には、投資でいうところの「リスク」がないからです。

もし、まとまったお金をどうするか思案しているようであれば、NISAの成長投資枠を利用するのがよいかと思います。成長投資枠であれば一括投資ができ、複利効果を得やすいからです。

本記事では運用成績に差がないことを前提としましたが、投資先が異なれば、当然、「どちらがよいか」という比較はできなくなります。本記事が、NISAとiDeCoをどのように活用するかの参考になれば幸いです。

出典

金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCo(イデコ)のメリット
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等
国税庁 高齢者と税(年金と税)
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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