【特集】祖父母が大切にしている農業を手伝いたい 新たな名物を生み出した女性の思い

3年ほど前に「農業を生きがいにしている祖父母を手伝いたい」その一心で農業を始めた女性がいます。畑で作った野菜であらたに人気調味料を生み出した女性を取材しました。

北秋田市七日市。周りを山に囲まれた自然豊かなこの場所で、農家に転身した女性がいます。

鴨下望美アナウンサー

「こんにちは~宮本さんですか?よろしくお願いします~秋田放送の鴨下です」

宮本さん

「宮本です、よろしくお願いします」

宮本昌子さん37歳。3年ほど前に自身が代表を務めるふかさわファームを立ち上げました。

宮本さんが野菜を育てている畑は、母方の祖父母から受け継ぎました。

この日、苗を植えたのは、北秋田市の特産でもあるシシトウです。

「こんな原始的な植え方してる農家いないと思いますけど多分。祖父母からやり方聞いて。そのままやってるので。でも原始的だけどやっぱこう土抑えてあげたりとかしたいなと」

丁寧な作業が実を結び、宮本さんのシシトウは去年の秋田県種苗交換会で2等賞に輝きました。高い評価を受けたシシトウのほか、40品目以上の農作物を育てている宮本さん。

より気軽に野菜の美味しさに触れてもらおうと、加工品の開発にも力を入れています。

パウンドケーキや飴、ノンカフェインコーヒーなど。全ての商品に、宮本さんの畑で栽培した野菜を使っています。

なかでも人気を集めているのが。

鴨下アナ

「ありました!シシマス!結構目立つようにディスプレイされています」

ふかさわファームと羽後町のジャム工房が手掛けた商品、シシマスです。

宮本さんが育てたシシトウで作った味噌と、ジャム工房の人気商品、粒マスタードを合わせました。こちらは、去年の種苗交換会で1等賞にあたる”県知事賞”を受賞しています。

「最初こうマスタードのつぶつぶ感とこう香りがぐっとくるんですけど、後からシシトウ味噌のなんていうんでしょうね、苦いまではいかないんですけどすごく美味しい苦さが追いかけてくる感じですね。ソーセージとか、お肉類とかご飯にもいけそうな気がします」

道の駅の運営会社も新たなシシトウ商品の誕生を喜んでいます。

鷹巣観光物産開発株式会社 笹木俊雄社長

「今年に入りましてからは、かなり評判が良くてリピーターも多いように聞いております。なんといっても北秋田市の特産品ですので、(一緒に)盛り上げていきたいなと」

宮本さんが農家に転身したのは2021年10月。それまでは、理学療法士として大館市の高齢者施設で働いていました。

主にリハビリを担当していた宮本さん。高齢者の生きがいやイキイキと過ごせる環境づくりについて考えるようになりました。

そんな時思い出したのが人里から離れた場所で農業を続ける祖父母の存在。

「農業を生きがいにしている2人を手伝いたい」。その一心で畑を継ぐ決断をしました。その後は3人で農作業を行っていましたが、去年6月、祖母のハルエさんががんのため他界。ただ、ハルエさんは、がんと診断されてからも積極的に宮本さんを手伝い、最期まで自宅で過ごしたといいます。

宮本さん

「仲いい祖父母がこう最期までいられたかなあって思ってその手伝いとかはちょっとは出来たかなあって思ったりします」

祖父の広治さんは、現在も宮本さんをサポートしています。御年、なんと90歳です。

心配するが故についつい厳しい言葉をかけてしまう広治さんですが、孫との農作業にやりがいを感じ、毎日、元気に宮本さんを支えています。

宮本さん

「元気な姿見ると嬉しいし。体動いているの見れば安心するしなあと思って。」

「元々理学療法士だったこともあるから、その農福連携とまでいかなくても、祖父が畑出れば作業するみたいに、高齢者や障害ある方とかでもいいし、そうじゃない普通の誰でもいいからこう作業して元気に長くいてくれるような何かができないかな~って」

加工品開発のほか、いずれは、誰かの生きがいややりがいづくりにも一役買えないかと考えている宮本さん。大好きな祖父母から受け継いだ畑で農業の持つ可能性を探り続けます。

© 株式会社秋田放送