日鉄のUSスチール買収、米大統領選後に「粛々と協議を」=自民党・甘利氏

Kaori Kaneko Ritsuko Shimizu

[東京 22日 ロイター] - 産業政策に詳しい自民党の甘利明元幹事長は22日、米国で政治問題化する日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、大統領選挙前に無理に進める必要はなく、その後に経済事案として「粛々と協議をすればいい」と述べた。民間企業の問題であり、日本政府が働きかける必要はないとの見方も示した。

経産相などを歴任した甘利氏はロイターとのインタビューで、同事案は大統領選挙が終わるまでは「あえて強引に進める必要ない」とし、米側の懸念などに対し「誠実に、淡々と、不安に答えるということだけやってる方がいい」と語った。

同買収計画には全米鉄鋼労働組合(USW)が反対し、11月の大統領選本選に共和党候補として出馬するトランプ氏が「阻止する」と表明。バイデン大統領もUSスチールは米企業であり続けるべきと慎重な姿勢だ。日鉄は「強い意志を持って、できるだけ早いタイミングでクローズする」(森高弘副会長)とし、実現に向けて関係者への働きかけを続けている。

甘利氏は、経産省など日本政府が積極的に働きかけるようなことも「やるべきではない」と述べ、「企業判断であり、そこをわざわざ政治イシュー(問題)にする意味は何もない。わざわざヒートアップさせるような議論をする必要すらない」と語った。大統領選挙が終了した後、経済分野の事案として「粛々と協議をすればいい話」とした。

<半導体への政府支援、やり切る覚悟>

党の半導体戦略推進議員連盟会長も務める甘利氏は、国内で最先端半導体の量産を目指すラピダス(東京都千代田区)に対し「まだ、兆円単位の政府支援が必要」との見方を示した。政府は先月決定した最大5900億円の追加支援を含め、ラピダスに総額9200億円の補助金を出すことを決めている。政府支援と同時に「民間からも出資を募るとか、あるいは融資を使うとかラピダスの努力も必要だ」とした。

トヨタ自動車やNTT、ソニーグループなども出資するラピダスは、2027年ごろに回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの次世代半導体を量産化することを目標にしている。

甘利氏は、半導体企業に対する政府支援について「途中で止めたら今までの投資が無になる。そこはある種、覚悟を持ってやり切るということだ」と語った。

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