『くるり』第7話 「忘れたいことがある」という贅沢と、神尾楓珠のサービスカット

めるること生見愛瑠主演の『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)も第7話です。

前回は「びしょ濡れめるる」「セーラー服めるる」という眼福サービスを提供してくれた同作ですが、今回は一転「酔っ払い神尾楓珠」「あたふた神尾楓珠」「キリっと神尾楓珠」を繰り出してきました。全方位的にサービス精神がすごい。

というか、結局のところドラマを見るということは俳優さんの姿を見ることから始まるわけで、感想だ解釈だというのはその後ですからね。初手から強いパンチを打つべきなんです。強い芝居、強い画面というものを俳優から引き出す。そういうことを怠りなくやっている。瀬戸康史のセクシー上裸も見せちゃう。やっぱりちゃんとしてるんですよねえ、『くるり』。

振り返ります。

■「自分探し」をやめた先のこと

前回、高校時代の同級生の多面性に触れたことで「もういいや、自分のこと探さない」という思いに至ったまことさん(めるる)。完全に吹っ切れたらしく、周囲に躊躇なく「今の自分」をぶつけていくことになります。

元カレの花屋・公太郎(瀬戸)とのケンカのシーンは実にスリリングでした。

10年前にバイク事故で肩に大ケガを負い、バスケ選手の夢をあきらめていた公太郎。2ケツの後ろに乗っていたそうで、運転していた幼なじみの男の子とは事故以来、疎遠になっていました。

「つらそうだったから、俺のこと見るのが。バスケしてない俺があいつの近くにいる限り、あいつは自分のこと許さないし、責め続ける」

だから自分も忘れたいし、幼なじみにも事故のことを忘れさせたい。どっかで楽しくやってれば、それでいい。公太郎の言っていることはよく理解できるし、気持ちもわかります。

しかし、すべてを忘れてしまったまことさんには、もはや「忘れたい」ことなんてひとつもないし、「忘れるべき」ものもない。だから、それを持っている公太郎さんが自分から何かを忘れようとすることを許すことができない。

「忘れるってどういうことだかわかってる?」

「話さなきゃいけないのは、さっぱり記憶のない元カノじゃないでしょ」

このときのまことさんは、相手を傷つけることをまるで恐れていません。公太郎さんのことも、事故を起こした幼なじみのことも、自分がこうやって思いをぶつけることで傷つけるかもしれないなんて、全然考えてない。その姿は、乱暴ですらある。

「傷も歴史」

第3話で、まことさんをブッ刺した指輪店の客の言葉です。

「忘れたいことがある」って、贅沢なんだよなぁ。めるるがイケメン3人をはべらせるラブコメを見ながらそんなことを考えるなんて、第1話を見始めたときには想像もしてなかった。

■誰を信頼するのかは自分で選ぶ

まことさんがこんなふうに無遠慮に思いをぶつけることができたのは、公太郎という人間を信頼しているからです。

自分探しをやめたとき、人は「今の自分」を他人に対して開いていくしかない。さらしていくしかない。訴えていくしかない。

そして、誰に対してそれを実行していくかは、自分で選んでいくしかない。

前回、記憶のないまことさんは、周囲から「寄ってくる人が詐欺師でもわからない」ことを心配されていました。でも、それは記憶があるなしはあんまり関係ないんですよね。誰だって詐欺師に騙される可能性はあるし、誰が信用できるかなんてわからない。

だから「今の自分」を開いて、受け入れてもらった人を信頼していくしかない。

そういうことを語りながら、このドラマはまことさんにウソをついている人を近くに置いているわけです。自称初対面、一目惚れだったはずのITイケメン・律(宮世琉弥)が、なんらかの意図を持って正体を隠していることを確定させてきました。ミステリーとしても、ひとつ前に進めておく。そういう作業です。

おもしろいなー。どうなるんだろ。

あと余談ですが、短期記憶障害を持っている人物として描かれたメンクリの受付女性(片平なぎさ)、高次脳機能障害かと思ったら若年性認知症だそうですね。今期、あまりにも記憶障害のドラマが多かったから勘違いしてたけど、よく考えたらそっちのほうが自然だわね。片平なぎさも出番少ないけどすごい芝居してると思います。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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