松本サリン事件から30年 救急患者に対応した医師が講演 岐阜県美濃加茂市

松本サリン事件について語る医学博士の奥寺敬さん=美濃加茂市、中部国際医療センター

  1994年に長野県で発生した「松本サリン事件」からまもなく30年になるのを前に、当時現地で患者の治療にあたった医師が講演し、神経化学物質の危険性をあらためて指摘しました。

  メディア向けの講演を開いたのは、美濃加茂市にある「中部国際医療センター」です。

  この病院で集中治療部長を務める医学博士の奥寺敬さん(68)は、30年前、信州大学の医師として松本サリン事件に遭遇。深夜に次々と救急搬送される患者の治療にあたりました。

  患者には意識障害、けいれん、目の瞳孔が縮む縮瞳などの症状があり、何らかの毒物による中毒症と推測されました。死者8人、重軽症者は約600人。事件から10日後には神経ガスの「サリン」が原因物質であると特定されました。

  しかし、奥寺さんは「当時のマスコミ報道は犯人探しなど、興味本位のもので、神経化学物質の危険性に対する取り扱いが不十分であった」と指摘しました。

  事件は、後の地下鉄サリン事件と合わせていずれもオウム真理教の教徒らが神経ガスを散布したものと分かりました。さらにサリンの製造に 教団の医療関係者が関わっていたことも分かりました。

  奥寺さんは「化学物質は私たちの身近にあり、今でも新しい化学物質の開発が進んでいる。医療関係者は化学物質の知識を医療以外の目的に使用してはならない」と話し、サリン事件の教訓を医療界としても再確認すべきと訴えました。

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