被災した建物の梁や柱 工芸品に 能登復興へ岡山大院・山本教授ら

被災地から運び込まれた木材を確認する山本教授(右)と石原さん

 能登半島地震で被災した建物の材料を思い出の品に変えて届けたい―。木材利用で被災地復興を目指す石川県の現代美術作家・中村厚子さん(42)から倒壊や津波で浸水した家屋の梁(はり)や柱を譲り受け、岡山大大学院教育学研究科の山本和史教授(61)=木材工芸=がボウルや一輪挿しなどの工芸品作りを進めている。現地で支援を行う「いのりんジャパン」(岡山市)が仲介した。住民は仮設住宅での生活や移住を余儀なくされ、住宅再建が難しいケースも目立つ。住み慣れた家の証しを残すプロジェクトだ。

 中村さんらのグループは、倒壊した家屋などから木材を集め、活用する活動「マテリアルバンク」を実施する。被災地には古民家や古いお寺が多く、松や栗などの立派な木材が使われているが、地震や津波による被害は甚大。再建困難な人も多く「長年住み慣れた家の材料が災害ごみとして処分されるのは忍びない」と中村さんらは解体ボランティアの代わりに家主から譲り受けた木材を使い、コミュニティースペースの建築を進めている。

 他の木材活用法を探る中、被災地の珠洲市で「いのりんジャパン」の代表・石原靖大さん(49)と一緒に活動し、石原さんが知り合いの山本教授に相談した。山本教授は東日本大震災の際、「とんかちプロジェクト」と銘打って大工道具を送ったり、被災者の心を癒やす木製の鏡餅「木餅(きもち)」を届けたりする支援を展開。石川県で暮らした経験や知人もいることから取り組みに賛同した。

 石原さんが中村さんから受け取った4本の梁や柱(長さ約70センチ)を17日、岡山大キャンパスの工房に運んだ。誰の家か分かるように中村さんが記した住所と名前が見え、山本教授は乾燥や虫食いの具合を確認し、直径約20センチ程度の木製ボウルや卓上を彩る花瓶の作製を提案した。作品が完成次第、石原さんが被災地へ届ける。

 「アートは希望へ、クラフトは生活の豊かさにつながる。可能な限り協力したい」と山本教授。中村さんは「岡山大の学生も木材に触れ、遠い被災地に思いを寄せてもらえれば」と話す。

地震発生後から支援 いのりんジャパン

 いのりんジャパンは能登半島地震発生後、1月22日から毎月1、2回現地入りして支援活動を展開している。

 石川県珠洲市を中心に、貴重品の回収など、さまざまな現地ニーズに合わせて活動。最近は津波に襲われた家屋で、西日本豪雨の被災地・倉敷市真備町地区で培ったノウハウを生かして床下の泥出し、乾燥、消毒を行い、住民に喜ばれているという。代表の石原靖大さんは「現地の人たちと信頼関係を築きながら、細く長く続く支援を、被災者と一緒に考えたい」と話していた。

 27日に再び石川県に向かう予定で、空気を循環させるサーキュレーターや、延長コード(10メートル)の提供を募っている。問い合わせはメール(inolinjapan@gmail.com)。

能登半島地震の被災地・石川県珠洲市で活動するいのりんジャパンの人たち(いのりんジャパン提供)

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