稀代のエンターテイナー【堺 正章】俳優、歌手、コメディアン… ずっと芸能界の第一線!  堺正章のエンターティナーぶりをじっくり考察!

「チューボーですよ!」は、日本版「世界の料理ショー」

お茶の間の人気者として、日本の芸能界に最も長く君臨している男性タレント。それは堺正章ではないだろうか(女性はおそらく黒柳徹子)。堺のトーク力やエンターテイナーぶりを活かして、1994年から2016年まで、22年続いた番組が『チューボーですよ!』だ。

『チューボーですよ!』が当初意識したのは、カナダの人気番組『世界の料理ショー』。日本でも1974年から79年まで東京12チャンネル(現:テレビ東京)で放映されていたので、50代以上のかつてのテレビっ子なら覚えているだろう。料理研究家のグラハム・カーが軽妙なトークを繰り広げながら、バターたっぷり、胃もたれしそうな豪華メニューを作っていた、あの番組である。

お坊っちゃま育ちで、家ではほとんど料理をしないという堺。番組でもあえて料理上手にならないよう心がけていたというが、いやいや、やっぱり “キョショー” は上手だった。グラハム・カーには及ばないかもしれないが、中華鍋の振り方、包丁さばき等も玄人はだしになっていった。時々大きな失敗もあったが、番組を盛り上げるために、視聴者に親しみを持たせるために、あえてなのでは… と邪推してしまう。なんていったって、堺は “ミスターかくし芸” なの だから。

ⓒTBS

なんでもひょいっとこなし、ずっと芸能界の第一線にいるマチャアキ

芸達者だらけの芸能界でも、堺のエンターテイナーぶりは頭抜けていた。2010年まで放送されていたフジテレビ系バラエティ『新春かくし芸大会』では毎年至芸を披露。1978年の主演ドラマ『西遊記』での如意棒さばきも忘れ難い。手先が器用なだけでなく、身体能力がものすごく高い。

さらに軽妙なトーク、スマートな身のこなし、洗練された着こなし。俳優、歌手、コメディアン、司会… なんでもひょいっとこなし、ずっと芸能界の第一線にいる。大御所ゆえにちょいちょい怖い話も耳にするが、愛嬌のあるサル顔、小柄でスリムな体型は、威圧感とは一切無縁。マチャアキというニックネームも絶妙だ。

「テレビで立派になっちゃダメ。テレビでベテランになっちゃダメ。昨日出てきた人とも旧知の仲のようにやらなきゃダメ。テレビは社交場のパーティなんですから」

週刊文春の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」でも、堺はそう語っていた。『チューボーですよ!』には数々のゲストが出演したが、デビュー間もない若手俳優にも、旧知のベテラン歌手にも、同じように接して盛り上げていた。とはいえ、私の印象に残っているのはスパイダース時代からの盟友、井上順出演回。マチャアキも順も東京の山の手人。おちゃらけながらもどこか品があり、オジサンになっても “育ちの良さ” が垣間見えた。

2度目の離婚理由は、膨大なお中元・お歳暮!?

マチャアキ、女性にもそりゃモテただろう。私生活では3度の結婚を経験したが、2人目の妻だった岡田美里が語った離婚理由は忘れられない。

“膨大に送られてくるお中元、お歳暮の対応が辛い”

そんな理由、後にも先にも聞いたことがない。シーズンになると、岡田は1日に何回も宅配便の受け取りに判をつき、突然届いた活きクルマエビや殻付き生ガキ100個をどう食べ切るかに頭を悩ませていたのだとか。当時は “贅沢な悩み” とワイドショーで叩かれていたが、気持ちはわかる。お礼状を書くのも大変だ。堺の大物ぶりを実感するのに、十分すぎるエピソードだった。

目を真っ赤にして、「僕が仕事人間だったことが原因」と堺が語っていたのも覚えている。「♪悪いのは 僕のほうさ 君じゃない」と、あのとき、悲しげなマチャアキを見ながら、そう口ずさんだのは私だけじゃないはず。

宅配便のドライバー不足が深刻な今、マチャアキ邸に送られてくるお中元、お歳暮の数はどうなったのだろうか。レギュラー番組『世界一受けたい授業』が終了した今、さすがに殻付き生ガキ100個はないだろうと思いたい。

カタリベ: 平マリアンヌ

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