プロアマを“人質”にした協会の傲慢ぶりで伝統ある大会が消滅危機…3年前から続く対立構造の根本【女子ツアーの裏で蠢く火種と禍根】

3月のアクサレディスでツアー初Vの臼井を祝福する小林会長(C)共同通信社

【女子ツアーの裏で蠢く火種と禍根】#2

今季ツアー開幕に合わせた日本女子プロゴルフ協会の肝いり新規プロジェクト「応援ゲームアプリ」がいまだにスタートできないトラブルはすでに取り上げた。

しかし、協会の小林浩美会長の悩みのタネは、ゲームアプリよりも大会主催者からの主催権返上が思惑通りに進んでいないことだ。

女子ツアーは協会主催大会(3試合)を除き、各大会を開催するスポンサー企業が試合の主催権を持っている。協会は大会に選手と競技員を派遣する公認団体に過ぎなかったが、2021年に協会は各主催者に対し、「25年から特別協賛会社になってもらい、大会冠料として4億円(当時)を協会に支払ってもらう」と提案。もちろん多くの主催者は主催権返上に何のメリットもなく反対の立場を表明して、3年前から根深い対立構造が続いている。

その後も主催者との調整がうまくいかず、協会は当初計画より2年延期して27年からと“主催権問題”を先送りしたが、小林会長は「(主催者に)説明が足りなかった。反省する」としれっとしているという。

だが、「(主催権についての)話し合いが十分に行われていない。2年延期についても、協会からは何の説明もない。冠料を3億5000万円にするという一方的な通達はあったが、どうしてその金額になったのかの根拠も明細も一切教えてくれない」(主催者)。

説明が足りないのではなく、説明がないのだ。

当初4億円とみられた冠料がいつのまにか3億5000万円に下がった理由も提示されないのだが、協会の体質、というより小林会長の「やり方」は昔から同じだ。

手の内を明かさず、「協会は今後こうします」と一方的に宣言して相手がどんなリアクションを見せるのかを探っている感じだ。

説明会では協会の方針を話すだけで、主催者から意見を聞こうともしない。

大会主催者はいずれもわが国を代表する企業であり、イベント開催にも社内で稟議書が必要だ。しかし、協会から十分な情報を得られず、大会冠料が3億5000万円と言われただけでは大会開催の決裁が得られない。株主対応が必要な上場企業ならなおさらだ。

協会の乱暴な姿勢に、「人(主催者)の財布に手を突っ込んで勝手なことをやろうとしている。女子ツアーを盛り上げるためにずっと協力してきたが、もう撤退する」と怒り心頭の大会主催者もいるという。それも一大会だけでなく伝統のある老舗トーナメントまでも同調の動きを見せている。

協会が主催者に対して強気なのはプロアマ人気が背景にある。大会直前に主催者の取引関係者を招き人気女子プロと一緒にラウンドするコンペが好評なのだ。主催者の中には「プロアマ大会が無事に終わってくれたらそれだけで十分」というところもある。

これは小林会長の前任者である樋口久子前会長が女子プロにホスピタリティーを徹底させて人気を定着させたイベントだ。小林会長の手柄ではない。

ところが小林会長は“プロアマ大会をやりたいんでしょ。だったら言うとおりにしなさいよ”といわんばかりに主催者の弱みを握っているから、高圧的な姿勢がとれるのだ。そして、来年から主催者にさらなる負担アップを通達して今、問題になっている案件がある。(つづく)

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