世の中には「お金」で計れないこともある【シニアのためのマネー講座】

お金は大事だけど…(C)日刊ゲンダイ

【シニアのためのマネー講座】#95

「あの~、一匹も釣れないんですけどー」

さすがに1時間、何もないと、文句のひとつも言いたくなる。

「おかしいな」と店主は首をかしげる。しかし、アタリすら一回もこない。これはマジでおかしい。

「ホントに魚いるの?」

ここは山梨県の、とある釣り堀。客はたくさんいるが、われわれだけはどうしても釣れない。

常連らしきおっさんはバンバン釣っているが、制限時間になっても何も釣れない。

「サクラか? それとも浮きの位置がおかしい?」

いろいろ勘繰ってみたが、結局、分からずじまい。最終的には「しょうがないな。2匹あげるよ」と、店主は嫌々そうにバケツを差し出してきた。

「もう、二度と来ねぇ」

最近、50代の男がガールズバーに入れ込んで、20代の女の子を刺殺する事件があった。ホンダNSXやバイクを売って2000万円ぐらいつぎ込んだという。

■人の気持ちは…

世の中では「キャバ嬢に入れ込むのはバカ」「結婚前提なんてありえない」などという声も聞かれた。

しかし、犯人を擁護するつもりはないが、本人はさぞかし真剣だったのだろう。その気持ちを踏みにじられた反動は大きく、結果的に殺意を抱いてしまったようだ。

でも、私の知り合いでキャバ嬢と結婚した人もいるので、あながち「無理」とはいえなそう。そのキャバクラはわれわれの中では「釣り堀」と呼ばれていたところ。

「入れ食い」ともっぱらの評判で、モテない男からすれば「蜘蛛の糸」を手繰るような気持ちだったのだろう。

「騙される」前提で車や家を売るのは問題あるが、人の気持ちは決してお金で測れるものではない。「たかが車」という人もいれば、「されど車」という人もいる。価値観は人によって全然違うのだ。

さすがにシニアともなれば「みつぐ君」になるのを躊躇するはずだが、それだって「楽しい人生の一環」、まったくない話でもない。

節度を持って行えばOKかも、だ。世の中の人は何でも「お金」で測りたがるが、それはあくまでもひとつの見方。人生のベテランならば、当然、違う視点を持っていてもいい。

「魚が一匹も釣れない?だったら、近くのスーパー紹介してあげるよ」

こんな言葉にだって決してキレることはしない。ほんのちょっと殺意を抱くだけだ。

(黒岩泰/株式アナリスト)

© 株式会社日刊現代