ジュビロ磐田戦「なぜ浦和レッズは4連勝を逃したのか?」(2)レッズ中島翔哉「CKからの先制」とミスマッチ、ジュビロ「同点弾を生んだ」クロス

先制点を演出した中島翔哉。撮影/原壮史(Sony α1使用)

明治安田J1リーグ第15節、ジュビロ磐田(以後、磐田と記す)対浦和レッズ(以後、浦和)の一戦がエコパスタジアムで行われた。 中3日での連戦となった両チームの試合は、1-1の引き分けに終わった。浦和は、4連勝を逃した試合になったし、磐田は逆に、4連敗を食い止めたゲームになった。
このコラムでは、試合全般を通して、ポイントとなった場面をフォーカスして試合分析を試みたい。

続いて、68分の浦和の先制点、マリウス・ホイブラーテンの得点シーンを見てみよう。
左コーナーから中島翔哉の蹴ったコーナーキック(以降、CK)を、ファーサイドにいたホイブラーテンが右足でゴールを決める。
磐田のCKに対する守備は、基本はゾーンで守り、キーマンとなる相手選手数人にはマンマークする守備を敷く。ニアサイドに背の高い選手を置いて、ファーサイドを守るのは、ミッドフィルダーの山田大記だった。

ペナルティマーク付近にいたホイブラーテンがファーサイドに流れてきて、山田がマークすることになった。山田はホイブラーテンの肉体の圧力で後ろに押し出される。
ゾーンで守っている場合、相手が背の高く体格の良い選手に対しては、同じような体格の選手をつけないと、なかなか競り合いには勝てない。守る山田は174センチの67キロ、攻めるホイブラーテンは187センチ77キロ。体格の差はどうしても山田にとっては不利になってしまう。ここはミスマッチになっている。
磐田のゾーンは、ストーン役(セットプレーのときにゴール前を守る選手のこと)としてMFのレオ・ゴメスとフォワードのマテウス・ペイショットをニアサイドに並べている。

手薄なファーサイトに放たれた「中島のCK」

なおかつ、ニアサイドでやられたくないと考えていた磐田は、選手全体をニアサイドに寄せている。しかし、全体的に選手がニアサイドに寄りすぎていたために、ファーサイドに人数が足りていない。

ゾーンで守る場合の弱点はファーサイドにある。したがって、ニアサイドを超えてファーサイドにボールが蹴られた場合、ゴールエリア中央にヘディングで折り返されるか、今回のケースのようにシュートを打たれる可能性が高くなる。

おそらく、磐田は前知識として浦和のCKはニアサイドが多いと読んで、ニアサイドを固めたのだろう。それに対して、ニアサイドに守備をかけてくると読んだ浦和は、中島にファーサイドへのキックを蹴らせた。
磐田は、サンタナとアレクサンダー・ショルツにはマンマークで人をつかせていたのだから、ホイブラーテンにも体格のよいCBのリカルド・グラッサをつけてよかった。ニアサイドのケアはできていた分、ファーサイドが手薄になっていた。磐田にとっては、ミスマッチからの失点になった。
しかし、磐田はすぐに同点弾を決める。71分に交代してピッチに入ってきた金子翔太が、右足でボールを合わせてゴールする。
DFにとっては、クロスに対してどうやってボールをクリアするのかが難しい場面だった。

特に、体がそり返って後ろ向きになっているときに、ボールをどう返すのかが問題になる。浦和の右SB石原広教がサイドハーフの平川怜と競り合ったことから、ボールがバイタルエリアに流れてしまった。
体勢が悪いところに相手との競り合い。石原は頭をボールに当てるのが精いっぱいだった。

ゾーンで守った場合の「もう一つの弱点」

確かに状況的には難しいのだが、後ろにボールをそらすヘディングとか、ボールが来た方向に返すヘディングとか、こうした状況を意識しておかないと、うまくクリアできない。

早く着地地点を読むことと、バックヘッドでペナルティエリアの外にボールを流すことが大切なのである。この場合、結果的に相手にパスをしているのと同じことになってしまった。
84分のシーン。磐田の右CKからのFWマテウス・ペイショットが後ろのほうから飛び込んできてヘディングをする。GKの西川周作がボールを弾き出してことなきを得る。
CKの際の浦和の守備は、4人と4人をツーラインに並ばせて守る。ゾーンで守った場合のもう一つの弱点は、守っている選手と選手の間に後方から飛び込んでヘディングされた場合である。
まさに、このシーンはそれだった。磐田のときと同じように、体格の良い選手には同等にフィジカルの強い選手をマークにつけるのがいいと考えられる。
浦和は、攻撃に関してボールの動かし方が試合を重ねるごとにスムーズになってきている。したがって、ゴールシーンまでボールを運べる回数も増えてくる。そうすれば、おのずと得点力はアップしてくる。
次節のFC町田ゼルビア戦は前半戦の山場になる。首位を走る町田に黒星をつけられるのかどうか。浦和の課題は、クロスを入れられたときの守備をどう改善していくのかにある。5月22日水曜日のルヴァンカップの戦いを経ての26日日曜日の試合は、厳しい日程の中で先発メンバーを含めて総力戦になるだろう。

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