東映本社ビル解体で気になる…子会社「東映アニメ」を巡る親子上場問題

来年取り壊し予定となった「東映会館」/(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュースの核心】

東映直営の最後の映画館が姿を消す。1960年開館の東京・銀座「丸の内TOEI」だ。来年夏以降に営業を終了。60年超の歴史に幕を下ろす。一昨年12月には「渋谷TOEI」も閉館しており、これで直轄劇場はすべてなくなる。映画興行事業は今後、グループ会社のティ・ジョイが手掛けるシネマコンプレックスに特化する方針だ。

閉館は同地に併設する本社ビル「東映会館」の解体に伴うもの。25年夏にも取り壊しに着手し、29年完成をメドにホテルや商業施設などからなる複合ビルに衣替えする。

同社では当初「建て替えも検討した」(関係者)としているが、老朽化が激しく多額の改修費が見込まれることから「収益不動産として活用した方が得策」と判断、再開発を決めた。敷地面積は1100平方メートルで、総工費は23年時点の試算では約100億円。ただ資材費や労務費が高騰しており、「上振れは避けられない」(事情通)見通しだ。

東映は全国各地で所有する直営映画館を商業ビルやシネコンなどとして再開発する形で不動産事業を広げてきた。今回の本社・丸の内TOEI再開発で一連のプロジェクトはひとまず一段落することになる。

もっとも東映にとっての「最大の懸案」(市場関係者)にはなお明確な道筋がついたわけではない。グループで約4割の株式を保有し、東証スタンダード市場に上場するアニメ制作子会社、東映アニメーションを巡る親子上場の問題だ。時価総額の逆転現象が定着化しているためだ。

足元の水準をみても東映本体が2600億円前後なのに対し、東映アニメは5000億円規模とその差は倍近く。東映を買収すれば自動的に東映アニメ株がおまけでついてくるうえ、買収後に東映アニメ株を売却すれば「買い手の実質的な資金負担は600億円ほどで済む計算になる」(メガバンク筋)。

東映アニメは日本のアニメプロダクションの草分け的存在。「ドラゴンボール」「スラムダンク」や「ゲゲゲの鬼太郎」など数多くの優良コンテンツ資産を持ちグループの経営基盤を下支えする。時価総額の親子逆転現象の解消に向け、今後は東映本体の収益力と成長性をいかに高めていけるかが大きな課題となる。

(重道武司/経済ジャーナリスト)

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