【コラム・天風録】減税はスマートに

 眼鏡に小さなカメラや通信機能まで付いた「スマートグラス」。これを高校3年生が悪用した。大学受験の試験中、問題を撮影して外部に流し、解答を送らせた疑いで今月書類送検された。「不正入試眼鏡」に使うなんて、スマートと程遠い▲不正を防ぐ大学の担当者は頭が痛かろう。企業の給与担当にも頭を抱え、疲れている人が多いらしい。原因は6月からの「定額減税」。いくら所得税が減ったのかを給与明細に記すよう、政府が企業に義務付けたのだ▲所得税と住民税を1人計4万円減税する。6月分の給与明細は「定額減税×××円」「住民税0円」と記されるという。それを見て「減税の恩恵を実感してもらいたい」と、岸田文雄首相。だが、企業には扶養家族の確認など事務負担がのしかかる▲「ムダな労力を義務付けてまで減税アピールしたいのか」「恩着せがましい」。ネット上には批判があふれる。野党からも「選挙対策か」との声が上がる▲増税メガネ―。岸田首相はSNSでやゆされ、話題になった。減税額を給与明細に明記させることで「減税する首相」にイメージチェンジしたかったのか。給付金なら、手間も少なくスマートだっただろうに。

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