身近に自生「違法ケシ」 強い繁殖力 駆除追い付かず 茨城

民家近くの畑に自生していた違法ケシ=15日、坂東市内

「あへん法」などで栽培が禁止されているケシの駆除が茨城県内各地で続いている。東海村では5月、村道沿いで違法なアツミゲシが見つかった。県は自生する「違法ケシ」の開花時期に合わせ駆除活動を展開しているが、繁殖力は強く、駆除が追い付いていないのが実情だ。

あへん法で栽培が禁止されているのは一重や八重の花を咲かせる「ソムニフェルム種」と呼ばれるケシと、「セティゲルム種」のアツミゲシ。麻薬及び向精神薬取締法ではハカマオニゲシの栽培が禁じられている。いずれも麻薬の原料となるモルヒネやテバインを含有している。

県薬務課によると、県内で2023年度に確認、駆除された違法ケシは133カ所で9675本。今年5月8日には東海村に住む男児(5)が村道沿いに咲くアツミゲシを発見し、県が86本を駆除。同県坂東市では同16日に八重咲きのソムニフェルム種のケシ約160本が見つかり、県が同日中に全て刈り取った。

県は4月下旬~7月に「不正大麻・けし撲滅運動」を毎年実施。県民に違法ケシの連絡を呼びかけるが、近年は県内各地で自生確認の連絡が相次ぎ、同課担当者は「駆除が追い付いていない」と話す。

違法ケシがなくならないのはケシの繁殖力の強さが主な理由だ。東京都薬物植物園によると、違法ケシは他種より実が大きく、直径1ミリ未満の種が2000~3000粒入っているという。

実から飛び散った種子は、雨や風、鳥のフンや車などに付着して広範囲に拡散。十分な栄養がないアスファルトの路面などでも育つため、種が落ちると「(自生を)防ぎようがない」(同課)のが実情だ。植物に詳しくなければ違法ケシを見分けるのも難しいため、報告されずに自生区域が拡大する面もある。近年は近縁種との交配もあり、繁殖と駆除のいたちごっこが続いている。

違法ケシを自己判断で抜き取った場合、麻薬を抽出できる部分を所持したとして罪に問われる可能性もあるため、県は「判断に迷ったら最寄りの保健所に連絡してほしい」としている。

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