〈月収77万円〉50代のエリートサラリーマン、威圧的な態度で店員を一喝も「私、間違えてます?」と無自覚【カスハラの実態】

昨今、問題視されているカスタマーハラスメント、通称カスハラ。さまざまな影響が報告されていますが、なかには悪質なカスハラによって閉店に追い込まれるお店も。そんなカスハラ加害者は、どのような人なのでしょうか。みていきましょう。

客の迷惑行為に老舗銭湯がお手上げ、閉店へ…増え続ける「カスハラ」の実態

先日、話題になったのが、創業57年、神奈川県座間市にある老舗銭湯が、5月30日で閉店するというニュース。昨今、スーパー銭湯といった温浴施設は利用するものの、いわゆる“街の銭湯”は利用減。「時代の流れかぁ」と思った人も多いかと思いますが、実際はそのような文脈ではなく、閉店理由は、いわゆるカスハラをはじめとした客による迷惑行為。

駐車場のルール違反、ものを壊しても報告もなし、備品の盗難、サウナ代を払わず無断利用、敷地内に一般ごみや木材や家具などの不法投棄……悲しい出来事があまりにも多く、営業を続ける意欲がなくなってしまったと、SNS上で綴っています。

カスハラで、また銭湯文化が消えていく……SNS上では、驚きと悲しみのコメントが多数寄せられました。

先日、厚生労働省が発表した『職場のハラスメントに関する実態調査』によると、過去3年間で顧客などによる迷惑行為、「カスタマーハラスメント」を受けた経験があると回答したのは10.8%と、10人に1人の水準。また従業員から相談のあった企業は27.9%と、3年前の調査から8.4ポイント上昇しました。

――最近、カスハラってよく耳にするな

――カスハラって増えてない?

なんとなく、そう思っている人は多いでしょうが、そのとおり。近年、カスハラは増加の一途を辿っています。

カスハラ被害の相談があった企業のうち、過去3年間に相談が「増えた」と回答したのは全体の23%、「減った」は11%でした。業種別にみていくと、最多は「医療、福祉」で54%。「宿泊業、飲食サービス業」が46%、「不動産業、物品賃貸業」が43%と続きました。

またカスハラの内容をみていくと、頻繁なクレームなどの「継続的、 執拗な言動」が72%、大声で責めるなどの「威圧的な言動」が52%、中傷や暴言、土下座の要求などの「精神的な攻撃」が45%、セクハラやプライバシーの侵害など「業務と関係ない言動」が21%、居座りや長電話など「拘束的な言動」が20%、暴行や傷害などの身体的な攻撃」が10%でした。

一方で、「カスハラの予防や解決の取り組みを行っていない」と回答した企業は、全体の35.5%と3社に1社となりました。

カスハラをする「カスハラ客」…50代男性、しかも高収入という特徴

そもそもカスハラとは? 厚生労働省は『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』のなかで、以下のように記しています。

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先など(以下「顧客等」といいます。)等からのクレーム全てを指すものではありません。顧客等からのクレームには、商品やサービス等への改善を求める正当なクレームがある一方で、過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームもあります。

そんなカスハラをする加害者はどのような人なのでしょうか。株式会社エス・ピー・ネットワークが行った『カスタマーハラスメント実態調査(2023年)』によると、「直近1年以内に遭遇した不当要求やカスハラの相手」について、まず性別でみると「男性」が81.1%と圧倒的。また推定年齢でみていくと、「50代」が40.6%と最多。「40代」22.3%、「60代」17.2%と、40代以上が実に8割を占めます。

以前より「カスハラ客はおじさんに多い」といわれてきました。東洋大学・桐生正幸教授が2020年に行ったインターネット調査では、カスハラ客で多いのは「45〜59歳」で「年収1,000万円台」としています。つまり、高給の中高年男性はカスハラ客になりやすい傾向にあるということです。

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大企業勤務のサラリーマンの平均給与は、50代前半で月収46.1万円、年収800.8万円。50代後半で月収48.0万円、年収835万円。大企業勤務というだけでは、50代で年収1,000万円台というのは難しいようです。必要なのはさらに肩書。大企業勤務の課長だと、50代前半で月収60.7万円、年収1,044万円と、1,000万円台に到達します。さらに部長だと、50代前半で月収77.1万円、年収1,363万円と、余裕で1,000万円台といったところ。

大企業の部長と、サラリーマンのなかでもエリートと呼ぶにふさわしい肩書を手にしたとき……「自分は選ばれた人間なんだ」と選民意識が芽生えてしまい、ついつい「俺は客だぞ!」「責任者を出せ!」などと店員に対して威圧的な行動や言動をとってしまう。しかし

――えっ、私、何か間違えたこと、してます?

カスハラ客になっていることにも無自覚……そのようなケースは珍しくありません。ただカスハラは程度が過ぎると、脅迫罪や恐喝罪、強要罪、威力業務妨害罪などで訴えられる可能性も。せっかく努力をして頂点へとのぼりつめたエリートサラリーマン。カスハラで人生を棒にふることのないよう、自身の行いを冷静に見つめてほしいものです。

[参考資料]

厚生労働省『職場のハラスメントに関する実態調査』

株式会社エス・ピー・ネットワーク『カスタマーハラスメント実態調査(2023年)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

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