街裏ぴんく、不運なときを支えてくれた笑福亭鶴瓶の激励電話と今につながるミルクボーイの「結婚指輪」

街裏ぴんく 撮影/有坂政晴

コワモテフェイスとピンクのスーツでうさんくささを漂わせつつ、ネタが始まるとウソしかつかない「架空漫談」で観客を惹(ひ)き込む、『R―1グランプリ2024』の王者・街裏ぴんくさん。ここにいたるまでの20年あまり、なにがあっても、お笑いのことだけを考えてきた。ついに実を結んだ、街裏さんのTHE CHANGEとは。【第5回/全5回】

2024年3月9日、『R―1グランプリ』(フジテレビ系)で優勝に輝いた街裏ぴんくさん。後日、さまざまな芸人仲間が祝福してくれたという。

「例えば、なすなかにしの中西(茂樹)さんから“おめでとう。まずは今まで辞めずにやってきた自分を褒(ほ)めてあげてください”という言葉をもらったときは、グッときましたね。
R―1優勝直後で仕事が入っていた時期の3月後半に、新型コロナウイルスに感染して5日間療養しなきゃいけなかったとき、すごく運がないなあと思ったんですけど、そのときは(笑福亭)鶴瓶師匠がめっちゃテンパって“大丈夫か!?”って電話をくださって。"本当にすいません。コロナなんです”というと、“珍しいな! おまえ、運ないなあ。とりあえず体調管理せえよ”と激励をいただいたりとか」

ミルクボーイのアドバイスを芸風に取り入れた

なかでも感慨深さひとしおだったのが、ミルクボーイのふたりからのメッセージだった。

「ふたりは大阪時代からの同志で、ずっと応援してくれていたんですけど、内海(崇)ちゃんから“おめでとうございます! ついに来た!”みたいな感じで言ってくれたり。駒場(孝)ちゃんからは、2年くらい前にふとアドバイスをしてもらったことがあるんです」

そう話しながら、街裏さんは右手薬指に光る指輪を見せる。

「“結婚指輪をしていたらおもろいかもしれないですね”と、ふと言って。”あんなにわけわからん支離滅裂なことを言っているやつが結婚しているのがおもしろい”と。ウワ――ッ! 言うてて結婚してんのかい! みたいな。“みんなの潜在意識の中に結婚しているということを植え付ける意味で、結婚指輪をするの、いいかもしれませんよ”と言われたんです」

――たしかに、その芸風と風貌で結婚指輪が目についたら、インパクトがありますね。

「でも、結婚指輪をしながらネタをやるのって結構恥ずかしいし、勇気がいるじゃないですか。できずにいたんですけど、R―1の決勝の前に、おかんが、2年くらい前に亡くなったおじいちゃんの形見の指輪を持ってきて、くれたんです。“これに力をもらおう”みたいな感じで。おじいちゃんがつけてたやつだけど、お客さんから見たら結婚指輪に見えるなあと思って、駒場ちゃんのアドバイスとおかんの心意気がクロスして、R―1の決勝で初めてこれをつけたんです」

――結婚指輪に模しているけど、左ではないんですね。

「身振り手振りをするとき、右手を前に出す動きがあるので、カメラに抜かれたときにめちゃめちゃ映るように右薬指にしているんです」

優勝後のミルクボーイ・駒場の言葉に“ゾクッときた”

ちなみに駒場さんは、優勝直後にこんなメッセージをくれたという。「そりゃそうです。街裏さんが優勝しない世界がおかしかったんです」と。

「うれしかったですね。“今までの世界は別の世界で、この世界が本当の世界です”みたいな言い回しが、ゾクッときました」

芸人仲間から愛される街裏さんが見据える、次なる目標は、「全国で独演会をすること」だという。

「どこの都道府県に行っても応援してくれる人がおる、という状態を作りたいです。1年でもそれが早くできたらと思っています。いま、微々たるものですけどメディアの仕事もいただき出して、今までやったこともないようなことを全力でやっていますが、それをきっかけに独演会に来てくれる人が増えたら、と思っています」

街裏ぴんく(まちうら・ぴんく)
1985年2月6日生まれ、大阪府出身。学生時代に漫才コンビを組んだのち、2007年からピン芸人として活動。2017年8月『JUNK爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)の第二回地下芸人まつりで優勝。2022年2月、『Be―1グランプリ』で優勝し、芸歴制限が撤廃となった『第22回R―1グランプリ2024』(フジテレビ系)で優勝を果たした。5月に東京と大阪にて第十七回 街裏ぴんく漫談独演会「一人」を開催。

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