後付けひさしの要望が高まる

ひさし商品の提案が相次いでいる。特に、軒やひさしのない住宅が増加したことによる後付けひさしの需要が大きそうだ。

YKK APは、窓や玄関ドアの上に設置し日よけ・雨よけができる、ひさし「ルシアス バイザー」に後付け用を追加、2024年4月1日より販売開始した。

同社は、22年4月に「ルシアス バイザー」の先付け用を発売。同社の外構商品「ルシアス」シリーズの他商品と組み合わせた際に統一感をもたらすシンプルなデザインが特徴で評価を得ていた。

今回発売した”後付け用”は、基本的な構造やデザインはほとんど同じ仕様を取っており、一部奥行幅に制限があるが、一番要望の多いサイズには対応できるようにしている。また、先付け用・後付け用の両方に玄関用LED照明付き仕様の設定や、排水タイプの追加を行い、訴求を強める。

エービーシー商会は、昨年より「インサルヒサッシュ」の提案の強化を図っている。

「インサルヒサッシュ」は、22年に発売した商品。もともとビル用の庇を製造していた同社が、そのノウハウを生かして住宅分野にも踏み込んだ。住宅向けでは、窓用の「インサルヒサッシュLine」と勝手口用の「インサルヒサッシュSquare」を展開する。自社工場で生産を行うため、色やサイズなどの特注にも柔軟に対応できることが強みだ。様々な要望に応えられるため、デザイン的なアクセントとして外観に合わせて取り付ける提案を進める。

軒、ひさしを付けない住宅が急増

一方で住んだあとの不便さも

こうしたひさし提案が加速する背景に、軒なし住宅やひさしを付けない住宅の増加が挙げられる。

YKK APは、「ルシアス バイザー」の先付け用について、デザインはいいが、後付けできない点が惜しいという声があったという。その理由としては、主に2点あげられる。ひとつは、外壁仕上げの前に設置する先付け用は、取り付けの金具と、ひさし本体を設置する際に現場に複数回出向かなければならないためだ。

もうひとつが、ひさしのない住宅の増加だ。近年、資材高騰などで建築費が増加するなか、コスト削減のためにひさしをつけない新築住宅が増加している。しかし、「住んでみてひさしの必要性を感じた方から、多くの要望をいただいている」(同社)そうで、後付けひさしをリフォームで取り付ける需要は大きいとみる。一方で、先付け用のひさしは、強度の高さや納まりのよさに強みがある。先付け用には新たに積雪性能を設定し、対象エリアを拡大。「コスト削減で、ひさしをつけない住宅が増えているが、雨風が直接あたることで外壁が劣化しやすくなるため、長い目で見るとひさしを付けた方がよい」(同社)と、場面に合わせて後付け/先付けの提案を行っていく。
エービーシー商会も同様の理由で改修での依頼が伸びている。「新築とリフォームどちらにも対応可能としているが、軒のない住宅では、雨の日に換気ができない、汚れが付着しやすいなどの不便を感じる方が多く、改修での引き合いも少しずつ伸びてきている」(インサル事業部・小間さゆり氏)と、やはり軒がない住宅に住む人からの需要があるようだ。

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