安心の味わい...ふくしまの酒 全国鑑評会2位、情熱燃やす蔵元

初めての金賞受賞を喜び、酒造りへの思いを新たにする蔵人たち=南会津町・花泉酒造(写真上)蔵人と金賞受賞の喜びを分かち合う東海林さん(中央)=喜多方市・夢心酒造(写真中央)11回連続の金賞受賞を喜ぶ白井さん=会津美里町・白井酒造店(写真下)

 「酒どころ・ふくしま」の誇りを示そうと、酒造りに打ち込んだ蔵人たちの努力が認められた。22日、審査結果が発表された全国新酒鑑評会で金賞を受けた県内の各蔵元は、喜びを胸に一層おいしい酒造りへ情熱を燃やした。

 花泉酒造、「オール地元産」初の金賞

 「蔵人ワンチームで、ますます精進していきたい」。5度目の出品で初めて金賞に輝いた花泉酒造(南会津町)杜氏(とうじ)の中丸信さん(54)は、地域一体となった酒造りへ改めて気持ちを高ぶらせた。

 花泉酒造の成り立ちは100年以上前までさかのぼる。豪雪地帯として知られる南会津町の南郷地域は当時、流通網が発達しておらず、日本酒が手に入りにくかった。「お酒がないなら自分たちで造ろう」と住民有志が酒造りに立ち上がった。地元で愛される地酒になり、徐々に県内外にファンを増やしていった。

 創立100周年を期に、全国新酒鑑評会への出品を決めた。中丸さんは「従業員の士気が上がる。新しいことへの挑戦が大切だった」と振り返る。しかし、ほかのコンクールでは結果を出していたものの、全国新酒鑑評会で金賞を獲得するまでは時間がかかった。

 これまで金賞を4回逃しても、こだわり続けるものがあった。それは地元産を大事にする姿勢だ。今回の受賞酒は、南郷地域で栽培した酒造好適米の県オリジナル品種「福乃香」を使いつつ、同社伝統の蒸したもち米を活用する製法「四段仕込み」で仕上げた。中丸さんは「オール地元産で受賞できた意義は大きい。今後も蔵人一丸となって頑張りたい」と前を見据える。

 夢心酒造、6年ぶり返り咲き笑顔

 夢心酒造(喜多方市)は6年ぶり7度目の金賞受賞。社長の東海林伸夫さん(55)は「原料など全て地元産にこだわって酒造りを続けてきた。コメの契約農家の皆さんも喜んでいるはず」と笑顔を見せた。

 出品したのは「純米大吟醸夢心」。コメは喜多方市の契約農家が育てる「五百万石」、酵母は「うつくしま夢酵母」を使用するなど、文字通りの「地酒」となっている。香りが控えめで、ほんのり甘口が特徴だ。

 酒造りの基本概念は「常に異なり、常に変わらない酒」。東海林さんは「毎年少しずつバージョンアップさせていきながらも、お客さんにとっては変わらない味を目指している。昔ながらの夢心の味を守っていきたい」と決意を新たにした。

 白井酒造店、11回連続...手間惜しまず

 白井酒造店(会津美里町)は11回連続で金賞を受賞した。代表社員の白井栄一さん(52)は待ち望んでいた結果だけに「金賞を受賞できて本当に良かった」と喜びをかみしめた。

 酒米や水の質、気候など酒造りの条件が毎年変わる中でも、時間と手間をかけた酒造りを心がけてきた。受賞酒はこうじ造りが順調に進み、味の濃さ、味と香りのバランスが良く、近年で一番の出来に仕上がったという。「蔵人がしっかり管理して丁寧に造ってくれたおかげだ」と感謝を口にした。

 連続の金賞受賞は「蔵人の意欲向上につながっている」と語る白井さん。「今後も蔵人一丸となって丁寧に酒を造っていきたい」と言葉に力を込めた。

© 福島民友新聞株式会社