最新研究「痩せ」は危ない(3)24時間動かないだけで「脂肪筋」がたまる

日本人の座位時間は世界最長の7時間

順天堂大学大学院スポーツ医学・スポートロジーの田村好史教授(糖尿病専門医)は、「痩せと糖尿病」に関するいくつもの研究を行っている。2021年11月に発表したのは、「わずか24時間動かないだけで、インスリン抵抗性を招く脂肪筋(※1)が蓄積する」という研究結果だ。

「肥満はインスリン抵抗性の原因になりますが、肥満がなくても活動量が少ないと短期間でインスリン抵抗性が生じます。それがなぜなのかを探るために、動物実験とヒトを対象とした研究を行いました」(田村教授=以下同)

まずマウスの片脚をギプスで固定。2週間普通食、あるいは高脂肪食を摂取させた後、24時間不活動の状態にし、骨格筋のインスリン抵抗性と脂肪筋の量を調べた。

「すると24時間の不活動でもインスリン抵抗性が倍増。不活動に高脂肪食が加わると、インスリン抵抗性はさらに増しました。ただし、高脂肪食だけではインスリン感受性の有意な変化はありませんでした。脂肪筋はインスリン抵抗性と関連しており、不活動で倍増、不活動と高脂肪食でさらに増加しました」

次に調べたのが、不活動でなぜ脂肪筋が蓄積するか。明らかになったのは、脂肪筋を作り出す酵素の活性が不活動と連動していること。遺伝子導入でその酵素が働かないようにすると、不活動でも脂肪筋が蓄積せず、インスリン抵抗性が発生しないことも確認できた。

さらにヒトを対象に、24時間片脚をギプスで固定して動きづらくし、骨格筋の生検を行った。すると動物実験と同様に、脂肪筋を作り出す酵素が活性化し、脂肪筋が増加。動物実験と同様の結果だった。

シドニー大学による調査「世界20カ国における平日の総座位時間」では、日本人の座位時間は世界最長の7時間という結果が出ている。

「座位時間が長い、つまり不活動でいると、短時間でも脂肪筋が蓄積し、インスリン抵抗性が増す。痩せている、太っているということではなく、不活動により糖尿病リスクが上昇することが、この研究でも示されました。ここに高脂肪食が加わると脂肪筋は一層増え、糖尿病リスクがより高くなると言えます」

「動くことが体にいい」とよく言われるが、むしろ「動かないことが体に非常に悪い」のだ。 (つづく)

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