日本酒市場、若年層や女性ユーザーなど新たな顧客を獲得する売場づくりを

日本酒のカテゴリーは、節約志向による大容量品と、健康志向の糖質オフ系や小容量の付加価値品という消費の二極化が進んでいる。日本酒の売場を盛り上げるためには若年層や女性など、新たな顧客を育てる施策が必要となる。

純米吟醸や発泡性など付加価値型の日本酒が伸長

KSP-POSデータによると、2023年4月から24年3月の日本酒(清酒)カテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比1.6%減の9668円、数量PIは同4.8%減の15.29となった。

月別の金額PIの動向を見てみると、23年4月から7月までは前年に対してプラスで推移していたが、8月以降は前年割れが続き、24年3月に入ったところでプラスへ転じている。

物価上昇に伴い変化した生活者の消費マインドにより、節約志向の観点から大容量タイプ、小容量の付加価値タイプという消費の二極化がみられる。(写真はイメージ、sake, masu, rice, ear of rice, japanese alcohol)

日本酒のカテゴリーは例年、気温が下がり店頭に鍋物商材が増える10月頃から数字が上がりはじめ、歳暮や年賀といったギフト需要および人の集まる機会が増える年末年始が山場となっている。サブカテゴリーの金額PIを見てみると、純米吟醸酒、発泡性清酒、米だけの酒、料理酒、その他清酒については前年を上回っている。

コロナ禍は落ち着いたものの、昨今の物価上昇に伴い生活者の消費マインドが変化。節約志向の観点から選ばれる大容量タイプと、健康志向による糖質オフ系や小容量のちょっといいものといった付加価値タイプという消費の二極化がみられる。

リニューアル後の「のものも」が好調な大関ではオーガニック日本酒ブランド「#J」から、トライアルしやすい飲み切りサイズのアルミ缶を新発売。また日本酒ベースのフローズンカクテルが楽しめるパウチタイプの「Frozzee(フロージー)」2アイテムを期間限定で再販売し、若年層のトライアルを促進する。

日本酒ビギナーへの提案強化が市場拡大のカギに

日本酒カテゴリーは長年、中高年のヘビーユーザーがけん引してきたが、今後市場を拡大していくためには、若年層や女性といった日本酒ビギナーを獲得できるような商品開発や販促施策が求められる。メーカー各社では飲み切りサイズや低アルコールタイプなど多様な商品を開発し、ユーザーの拡大と定着に努めている。

日本盛は「JAPAN SODA」のシリーズ品として、国産の柚子をひとしぼりした「日本盛JAPAN SODA柚子」を新発売。菊正宗は香りと味わいの保持にこだわった「ネオカップ」シリーズに「キクマサネオカップ180mL」をラインアップに加えた。白瀧酒造では動物の絵柄も可愛い新シリーズ「byJozen」を展開。白鹿は1997年発売のロングセラー「白鹿 すずろ」のパッケージをリニューアル、白鶴酒造は糖質ゼロのカロリーオフ商品「糖質ゼロ ライトテイスト」を新発売した。沢の鶴は昨年、期間限定発売で好評を得た本醸造生酒「なまんま」を通年で発売する。

昨今の日本酒はフルーティーな香りを楽しめる商品が多く、洋食や中華などさまざまなメニューにも合わせやすい。価格訴求だけでなく醸造法や味わいの違い、料理との合わせ方など自分向きの商品と感じられる提案でトライアルにつなげることが、マーケットの拡大につながるだろう。

夏場に向け冷やし生貯蔵酒や甘酒、微発泡タイプ、オンザロックなど、季節感のある演出や総菜とのコラボなど、新規ユーザーが興味を持つ仕掛けをつくることで、日本酒売場を盛り上げたいところだ。

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