自治体向けソリューション市場に関する調査を実施(2024年)~2023年度の自治体向けソリューション市場規模は前年度比1.8%増の7,733億7,000万円を予測、基幹業務システム標準化の影響は2025年度に集中すると見込む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や将来展望、サービス提供事業者の動向などを明らかにした。

1.市場概況

2022年度の自治体向けソリューション市場規模は事業者売上高ベースで7,595億1,000万円、前年度比4.4%増と推計する。同年度は新型コロナウイルス感染症に関連する給付金事業の需要が市場を押し上げた。2023年度は横ばい程度の推移となり、前年度比1.8%増の7,733億7,000万円を予測する。2023年度は地方税共通納税システムの税目拡大、物価高騰による給付金対応などが発生したことで、多くの基幹ベンダーが前年と比較して横ばい以上の売上を達成する見込みである。また、窓口業務などのDXソリューションや業務効率化の実現を目的とした内部情報系システム※のニーズが高まっている。

※内部情報系システムとは、財務・会計系、人事・給与系、庶務・事務系、文書管理系等に関するシステム全般をさす

2.注目トピック~2024年度から基幹業務システムの標準化への移行が本格化

政府は自治体が抱えるコスト削減などを目的に2025年度末までに自治体の基幹業務(住民情報系)システムを統一・標準化し、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定している。現在、基幹ベンダーは期限までの移行に向けて多くの人的資源を投入して対応している。

2023年度は主に自治体との間で移行に向けた検証や運用テストなどを進める年になった。本格的な移行については2024年度から開始される予定である。ガバメントクラウドを活用した基幹業務システムの標準化対応は2025年度までの2年間で完了させなければならないが、ほとんどの自治体が2025年度中の移行を計画しているのが実態である。そのため、2024年度は標準化対応が市場に与える影響は小さく、2025年度にこれに対する特需が発生することが想定される。

3.将来展望

標準化対応が落ち着く2026年度以降の動向は大きく2つある。1つは標準化への継続対応である。政府は2025年度までにシステムの移行が困難である自治体に対して、別途移行期限を設定することを認めるとした。基幹ベンダーは2026年度以降もこれらの自治体に対して移行支援を実施することになる。また、ガバメントクラウドで運用する以上、クラウドに適したシステムにしていかなければならない。こうした必要性から2026年度以降も標準化に関連した対応は継続して行われることが予想される。

もう1つの動向として挙げられるのがDXの推進である。自治体における職員減少は深刻な問題となっており、そうした中でも住民サービスを維持していくにはデジタルの活用は必須である。2026年度以降、標準化に集中していた人的資源はDXの推進に充てられることになる。

こうした背景から、2026年度の自治体向けソリューション市場規模は特需が想定される2025年度と比べて、19.1%減と大きく減少することになるが、継続的な標準化への対応とDXソリューション推進など新たな事業の展開が開始されるため、2024年度の市場規模と比較しても縮小することはなく8,062億円になると予測する。

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