「新しい女」の生きざま。劇団青年座『ケエツブロウよ-伊藤野枝ただいま帰省中』

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マキノノゾミ脚本、宮田慶子演出による劇団青年座第256回公演『ケエツブロウよ-伊藤野枝ただいま帰省中』が5月24日(金)〜6月2日(日)、東京・紀伊國屋ホールにて上演される。

マキノノゾミと宮田慶子の“MMコンビ”は、これまでも明治〜昭和の文人たちを描いた作品で高い評価を獲得してきた。与謝野晶子と明治の若き文学者たちの交流を描いた『MOTHER』、物理学者・寺田寅彦とその家族を描いた『フユヒコ』、「坊っちゃん」の赤シャツと夏目漱石とを重ね合わせた『赤シャツ』の三作品は、いずれもおよそ2〜30年の長きに渡ってたびたび再演を繰り返している。

劇団青年座70周年および紀伊國屋ホール60周年を記念した今作でマキノと宮田が取り上げるのは、昨年没後100年を迎えた伊藤野枝。アナキズム(無政府主義)を標榜し、現代よりも世間一般の貞操観念が厳しかった明治〜大正期にあって、男女間のあり方に自由を求めるあまり、世間からは理解されないことも多くあった彼女。平塚らいてうによる『青鞜』に関わるようになった17歳から、1923年(大正12年)の甘粕事件で殺害されるまでの12年間を描く。

「ケエツブロウ」とは、伊藤が『青鞜』に寄せた詩の一節にある言葉だ。今作では、伊藤野枝がたびたび帰省していたという福岡県今宿の実家が舞台。女学校卒業後、決められていた地元の男との結婚。それが嫌で飛び出したのち、東京で平塚らいてうらと出会い、正式に離婚するために戻ってきた実家。再びの出奔。出産のための里帰り。実家に戻るたびに変化していく彼女と、その変化を受け止め始める周囲の人々……。

主人公・ノエを演じるのは、青年座入団10年目を迎える那須凜。2022年には第29回読売演劇大賞 杉村春子賞を受賞し、ますます注目を集める俳優だ。2017年、やはり同じくマキノ脚本、宮田演出でチェーホフを描いた『わが兄の弟』にも出演していた。7年の経験を重ねた那須がノエとして短く濃い人生をどう生きるのか、楽しみだ。

文:釣木文恵

<公演情報>
劇団青年座第256回公演『ケエツブロウよ-伊藤野枝ただいま帰省中』

作:マキノノゾミ
演出:宮田慶子

出演:那須凜 / 綱島郷太郎 / 松熊つる松 / 松平春香 / 土屋美穂子 / 横堀悦夫 / 遠藤好 / 小豆畑雅一 / 伊東潤 / 角田萌果 / 松川真也 / 古谷陸 / 岡本大樹

2024年5月24日(金)~6月2日(日)
会場:東京・紀伊國屋ホール

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2408286

公式サイト
https://www.seinenza.com/information/detail/id=493

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