生活保護受給・住民税非課税世帯で多いのは「高齢者」世帯?老後は「年金だけ」で生活しづらい?

実際に、生活保護受給世帯や住民税非課税世帯には、高齢者が多い

厚生労働省の「生活保護制度の現状について」によれば、生活保護を受給している被保護人員のうち、半数は65歳以上となっており、その割合は非保護人員全体の52%です。ここから、「生活保護受給者には高齢者が多い」といっても差し支えないでしょう。

また、生活保護を受けているということを「住民税が非課税である」ということとするならば、住民税非課税世帯にも高齢者が多いといえます。

生活保護の被保護人員は、おおむね年齢層が上がるごとに高くなっていっています。一番低いのは20歳から29歳で、全体の2.6%です。そこに当てはまらないものとしては、19歳以下(全体の9.6%)の場合がありますが、こちらは学生層など、働くことが難しい生活保護世帯の子どもが当てはまると想定されます。

さらに、60歳から64歳(7.9%)は全体と比較すると、生活保護受給者の割合がそう高くないようです。これは定年直後で、退職金やそれまで築いてきた貯金が存在するから、などといった理由が考えられるでしょう。

老後は年金だけでは生活しづらい?

正直なところ、老後に年金だけで生活するのは、容易ではないかもしれません。

総務省統計局の「家計調査」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯においては、毎月3万7916円もの不足が生じ、単身世帯においても、毎月3万768円も不足が生じてしまっています。ここから、老後に年金だけで生活するのは厳しいものがある、と予想されます。

もちろん、これらは統計上のデータであるため、年金だけで生活できるという方も、一定数は存在しているはずです。

しかしながら、統計から見えてくる一般的な世帯について、「老後に年金だけで生活することは難しい」というデータが出ている点は無視できません。そしてそれを考えると、「年金だけでは老後に安定して生活しづらい時代が来ている」といわざるを得ないでしょう。

不足分をどう補うか

年金だけで生活ができないのであれば、何らかの形で、それを補わなければなりません。それを補う方法はさまざまであり、各世帯が工夫して対応していることがうかがえます。

その一つが貯金など老後資金の切り崩しです。現役世代からコツコツ貯めてきた貯金や、定年時に受け取った退職金を切り崩していく、というのが一般的でしょう。また、今後はiDeCoやNISAなど資産形成制度を利用して効率よく老後資金を形成し、それを切り崩す、という世帯も増えていくでしょう。

他にも、定年後も再雇用に応じたり再就職したり、あるいはパートやアルバイト、はたまたシルバー人材センターなどで働いたりして、老後資金を補てんしている方も存在していることが想定されます。

さらにそれらと合わせて、年金の繰下げ受給(受取時期を後ろ倒しして、その分増額された年金額を受け取る方法)を行って、不足する年金額を補っている世帯もあるでしょう。

まとめ

生活保護受給世帯には高齢者世帯が多く、必然的に住民税非課税世帯にも高齢者世帯が多いだろうといえます。

また、総務省統計局の統計からも、老後に年金だけで生活するのは容易ではないことが想定されます。今後、老後をより豊かにし、安定したものとするためには、生活費の不足分をどう補うのか、現役世代のうちから考えていくことが重要になるでしょう。

出典

総務省統計局 家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2023年(令和5年)平均結果の概要
厚生労働省 令和3年度 社会・援護局関係主管課長会議資料(資料2)保護課「生活保護制度の現状について」

執筆者:柘植輝
行政書士

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