カステラ文化を支えた卵供養 長崎・福砂屋 「利他の心」受け継ぐ

卵供養を終え、あいさつする殿村社長=長崎市東小島町、正覚寺

 創業400周年を迎えたカステラ本家福砂屋(長崎市)は22日、当主殿村家の菩提(ぼだい)寺、正覚寺(同市東小島町)で原材料の卵を供養した。
 1624(寛永元)年創業。初代当主がポルトガル人から南蛮菓子カステラの製法を伝授され、中国福州から運ばれた砂糖を扱っていたのが屋号の由来と考えられている。当初は引地町(現在の桜町、興善町付近)に店を構えていた。6代目の頃に船大工町に移り、明治初期に建てた白壁に格子の建物は、今なお本店として使っている。
 12代目が中国で幸福を招く縁起物とされる蝙蝠(コウモリ)を商標とし、卵と砂糖を多く配合した特製「五三焼」も考案した。戦時中は材料が不足し軍事物資の乾パンを作ってしのぎ、戦後の1949年、九州巡幸で来県した昭和天皇に献上するためカステラ製造を再開した。
 創業以来、1人の職人が卵割りから泡立て、混合、攪拌(かくはん)、焼き上げまでを担う手作りの「一人一貫主義」にこだわってきた。白身を十分に泡立ててから黄身とザラメ糖を加え攪拌する「別立(べつだて)法」も守り続けている。
 卵供養は12代目が始め、毎年5月に開催。日々使う卵に感謝し、大切に扱って生かすよう再認識する機会としている。社員ら約150人が参列。読経の中、供物台に載せた卵に向け手を合わせた。
 16代目の殿村育生社長はあいさつで「長崎の街、風土、全国の方々に支えられて商売を続けることができた。先人の『利他の心』を受け継ぎ、これからもカステラ文化の創造、普及、発展に力を結集してほしい」と社員に伝えた。

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