レトロダイバーズの名作が本格ダイバーズに進化 ロンジン「レジェンドダイバー」

ダイバーズウォッチはスポーツウォッチのなかでも特別な存在だ。高い防水性や潜水開始時間をマーキングするための回転ベゼルが装備されているために、他の時計よりもケースが大きく厚い。だが、数は少ないが例外もある。それがスイス屈指の名門ロンジンの「レジェンドダイバー」だ。

スキューバダイビングがレジャーとして世界で広く楽しまれるようになったのは今から60年ほど前の1960年前後のこと。ボンベに詰めた圧縮空気を呼吸しながら水中を潜るが、どのくらい深くまで潜るかで「空気の持ち」が大きく変わる。潜水時間の管理を厳格にしなければいけないダイバーにとって、高い防水性と視認性を備え、水中でも潜水時間が把握できる腕時計、つまりダイバーズウォッチは当時、絶対に欠かせない安全装備だった。このニーズに応えて、1950年代末から時計ブランド各社は競って開発・発売した。

このとき各社が採用したのが、あるケース製造会社が開発した特殊な構造の「スーパーコンプレッサーケース」だった。防水性を確保するためのカギとなるパーツ「防水パッキン」は、潜水深度が深くなればなるほどケースとリュウズの間に密着し、高い防水性を確保する構造になっている。

2時位置のリュウズで文字盤のいちばん外側のインナーベゼルを回転させることができる。潜水開始のときの分針に▽マークを合わせたら、リュウズをねじ込めばベゼルのロックも防水性も完璧だ

1959年、ロンジンがこのケースを採用して発売したのが「Ref.7042」という、1気圧(=120m)防水のダイバーズウォッチで、今回紹介する「レジェンドダイバー」の原型だ。このモデルは、現代の一般的なケース外周部に重ねるような構造のアウターベセルではなく、文字盤4時位置に設けられた通常のリュウズに加え、2時位置に設けたもうひとつのリュウズで操作する、外周部が回転するインナーベゼルを採用していた。スーパーコンプレッサーケースを用いたデザインのダイバーズは、防水性が向上しながら1970年代初頭まで製造されることになる。

そしてロンジンは2007年、文字盤2時位置のリュウズで操作するインナーベゼルなど、当時の基本機能やスタイルはそのままに復刻モデルを制作。以降、何度も改良を重ね進化しながら、ブランドを代表する人気モデルのひとつになったが、そのいちばんの魅力は、ダイバーズらしくないフォーマルでドレッシーな雰囲気だ。

このモデルの隠れたこだわりと遊びが、ケースバックにプレス加工されたダイバーの左手だ。何とリュウズ2つのモデルをしている

具体的には、アウターベセル付きの“デカ厚”な現代のダイバーズとはまったく違う、インナーベゼルだから実現できたスタンダードウォッチのような外観と薄さ。クラシックなテイストのラグジュアリースポーツウォッチとしても魅力的なため、スポーツシーンはもちろん、スーツスタイルのビジネスシーンにも完璧にフィットする。加えてムーブメントもその心臓部にシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、さらに振動数を調整することで約72時間というロングリザーブを実現したスペシャルな自動巻きムーブメントを搭載。時計としての機能も最先端だ。

そして、今回紹介する2023年秋に発売された最新のレジェンドダイバーはさらに大きな進化を遂げている。ひとつめが、自動巻きムーブメントのスペックアップ。スイスクロノメーター検定協会により、ケーシング(ムーブメントをケースに入れる作業)した状態での15日間の精度テストを経て高精度が保証された「COSC公認クロノメーター」になった。もうひとつが、ダイバーズとしてのスペックが、国際標準化機構(ISO)の定める“ダイバーズウォッチ”の公的な基準、ISO6425にアップしたこと。これはプロダイバーも使う、いわゆる「リアルダイバーズ」であることを意味する。

カジュアルシーンをメインに楽しむなら、よりレトロな雰囲気が漂うレザーストラップモデルがおすすめだが、もしダイビングなどのスポーツシーンから日常のビジネスシーンまで活用したいのなら、SS製のブレスレットモデルを推したい。レザーストラップモデルにはない、よりドレッシーな雰囲気が楽しめる。

LONGINES / ロンジン
レジェンドダイバー 51.04万円(税込) ※レザーストラップモデル 47.74万円(税込)

SPEC

  • ケースサイズ:39㎜
  • 自動巻き、SSケース & ブレスレット、30気圧防水

  • ロンジン TEL : 03-6254-7350

Text : Yasuhito Shibuya

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