漫画家・新田章(青森県出身)が5年ぶり新作「若草同盟」 「生きづらさ」テーマ、自身の経験投影

新田による新作「若草同盟」の一場面(マガジンハウス提供)
漫画担当者と作品の打ち合わせをする新田章=4月(マガジンハウス提供)

 女性の浮気心を描きドラマ化もされている人気漫画「恋のツキ」の著者で青森県出身の漫画家新田章(ペンネーム、東京都在住)が、5年ぶりの新作「若草同盟」を発表した。マガジンハウスによる漫画サイト「SHURO(シュロ)」で4月から連載中だ。

 「テレビがない、服はもらいものばかり。周りからは変だねと言われる。貧乏だった生活を作品に生かした、自分なりの人生賛歌です」。新田は東奥日報の取材に力強く答える。青森県で過ごした幼少期や上京後の自身の経験を作品に投影した、生きづらさがテーマの物語になっている。

 コロナのまん延や、幸せのハードルがどんどん上がる世の中で「生きづらいと思う人が激増している」と感じた新田。誰かに読んでもらう価値があるものを-と考え「SFやホラー作品が好きだけど、下手くそな想像よりも貧乏生活をしていた『私の本当』の方が伝えられることがあるような気がした」と振り返る。

 新田は自身や友人らの実体験にフィクションを混ぜ込む作風で、細かな描写に定評がある。意識しているのは「笑っちゃうけどしんみりしちゃうような、人の滑稽な姿」を描くこと。「(主人公を)笑っていい、バカだと思ってもいい。でも、それだけじゃないかもと読者に思ってほしい」

 高校卒業までの時間を青森県で過ごした。その中で育まれた感性は作品に大きく影響している。「若草同盟」の主人公は青森県出身で、1話では雪景色が登場。新田は「とにかく青森の雪景色が好き。描きたいなと思いつつこれまで描けずにいた。念願かなって描けた」と声を弾ませる。

 作品をひとつ書き終えるたび「これが遺作の最後でいいのか」と考える。「漫画が好き。若草同盟を描き終えた後も作品を描きたいと思うはず」。飾らない言葉に、漫画を愛する気持ちがにじんだ。

 「若草同盟」は1カ月ごとに最新話を公開。サイト「SHURO」で無料で読める。

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 にった・あきら 県内の高校を卒業後、就職を機に上京。3年後に退社し漫画家へ。2005年、デビュー作「メチル・ビッグバン」でアフタヌーン四季賞佳作を受賞。「恋のツキ」は16年から約3年間、月刊誌「モーニング・ツー」(講談社)で連載し、18年にドラマ化、現在は米配信大手ネットフリックスで全世界に配信されている。そのほか著書に「あそびあい」(講談社)など。

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