「課長の話はさっぱりわからない」言いたいことが伝わらない管理職が意識すべきこと

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「課長の言いたいことが何なのか、さっぱりわからない」
「課長の話は、長いだけで内容が入ってこない」

なんて部下に思われていませんか。今回は、部下に「〇〇さんの話は、わかりやすいな!」と思わせる方法について、お伝えします。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

伝え方が上手な人が使うメタファーとは?

ロシア民話の『おおきなかぶ』という物語をご存知ですか。大きなかぶを抜くために、おじいさんとおばあさんが力を合わせますが、なかなか抜けません。お嬢さんが手伝っても、犬と猫も手伝っても抜けず、最後にネズミが手伝って、やっと抜けます。

この物語の中には、力の強い若者が出てくるわけでも、機械を作れるような優れたエンジニアが出てくるわけでもありません。みんなが力を合わせて、大きなかぶを抜いたという話です。

管理職の仕事も、この物語のようなものではないでしょうか。皆さんの組織に、できる部下や頭脳明晰な部下ばかりいればいいですが、実際はそうはいきません。「行動が遅い」「なかなかスキルが上がらない」など様々な部下がいます。管理職の仕事は、そんな部下一人ひとりの力を合わせて大きな仕事をしていくこと。組織の力を上げるマネジメント力を磨いていきましょう――。

このように私は担当する新任の管理職研修の中で、メタファーを用いて話します。管理職の皆さんはどのように思いましたか。

「そうそう、その通り!」「チームの力が合わさると、大きな仕事ができるよな!」と思った方が多いのではないでしょうか。メタファーをうまく使えると“伝える力”は向上していきます。

メタファーとは比喩の一種で、暗喩とも呼ばれますが、ここでは、ある状況や現象を説明する際に、別のものにたとえ、わかりやすく伝えていくプロセスを言います。そうした意味では、神話、伝説、おとぎ話、民話、寓話などもメタファーとなります。メタファーで伝えると、人は頭の中で想像を膨らませやすくなり、聞いた話を自身の内面の情報に照らし合わせていきます。この無意識の作業が理解を促進していくのです。つまりメタファー力を鍛えれば、皆さんの話は部下に伝わりやすくなります。

どうやったらメタファーをうまく使えるようになる?

メタファーで伝える力を上げるには2つのポイントがあります。まず、メタファーを日々集める習慣を持つこと。ふと目にした言葉や物語をメモしていく癖をつけましょう。

記事や偉人の言葉、書籍や子ども向けの絵本などには、たくさんのメタファーに使える内容が潜んでいます。先日もある書籍の中で、「組織は人間の体と同じで、弱いところに不具合が出てくる」という内容を目にしました。これは若手の離職から組織の問題を語る際に、使えるメタファーになります。

メタファーの材料が集まったら、部下に伝えたい内容とメタファーを組み合わせて使う練習を以下のステップで行います。これが2つ目のポイントです。例とともに見ていきましょう。

ステップ1:部下の問題となっている一連の行動や出来事を特定する。
(例:いつも顧客を怒らせてしまい、仕事がうまく進まない)

ステップ2:この出来事の抽象度を上げ、つまりどのようなことなのかを考える。
(例:顧客の話をしっかり聞いておらず、自身の言いたいことだけを伝えている)

ステップ3:望ましい結果や伝えたいことは何かを考える。
(例:自身の言いたいことを伝える前に、顧客の話をしっかり聴くことの大切さを伝えたい)

ステップ4:伝えたい内容に合うメタファーを、集めた材料の中から探す。
(例:仏像の耳は大きい。これは人々の話を漏らさずに聞くため)

ステップ5:選んだメタファーと部下に伝えたい内容を組み合わせる。
(例:仏像を見たことがあると思うけど、耳が大きいよね。これは人の話を聴くことの大切さを示している。自身に当てはめると、どう思う?)

このようなステップで練習することによって、メタファーを上手に使えるようになっていきます。メタファー力のある上司の言葉は、部下の心に響きます。そして、部下の行動変容が促され、組織の成果も向上していくのです。

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