職場で「再雇用」の話が出ていますが、定年後の再雇用は年収が「約20%」も下がると聞きました。別会社に再就職すべきですか? 年収が下がるのは“仕方ない”でしょうか…?

定年後は一般的には収入が下がることが多い

60歳で定年を迎える会社は多いですが、給与所得者の平均年収は50代をピークに、その後は下がっていく傾向にあります。国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収(男女計)は55~59歳が最も高く、546万円です。

しかし、その後の平均年収は60~64歳で441万円、65~69歳で342万円と下がっていきます。55~59歳の平均年収と比べると、60~64歳は約81%、65~69歳は63%程度にまで下がります。

また、リクルートの「シニア層の就業実態・意識調査2023(―個人編60~74歳―)」では、定年後に定年前と同じ会社に再雇用された人に対し、定年前後で給与がどれくらい変化したのかをアンケートで調査しています。定年前の給料を100とした際に、最も多かったのは「50~75%未満」で43.3%、続いて「25~50%未満」が21.4%、「75~100%未満」が16.3%と続きます。

これらの調査から、定年後は一般的には年収が下がることが多いといえるでしょう。

定年前に検討すべきこと

定年後、現役時代と比べて収入が大きく減ってしまう可能性があります。定年後の人生も長いため、ゆとりのある老後を過ごすためには、定年前に検討すべきことも少なくありません。

代表的なポイントについて確認していきましょう。

定年後の生活費を計算する

まずは現状の生活費をもとに、定年後の生活費がいくらになるのかを計算します。住宅ローンが終わるなら住居費を下げる、持病があり医療費が高くなりそうなら多めに見積もる、子どもが独立するなら教育費を下げるなど、ある程度見えている項目を織り込みましょう。

退職金含め、貯蓄を再確認する

続いて、退職金を含めた貯蓄がどれくらいあるのかを再確認します。貯蓄を算出する際には、預貯金はもちろん、株式や投資信託、貯蓄性の保険など、今まであまり日常的には金額の詳細を管理していなかったようなものも忘れずに計算しましょう。

年金はいくらもらえるのか再確認する

年金は基本的には65歳以降、生涯にわたって受け取れます。そして、50歳以降は「ねんきん定期便」にて、65歳からもらえる年金の「見込額」が記載されています。改めて、年金がいくらもらえるのかを確認してみましょう。

定年後にいくら稼げばいいのか計算する

定年後に必要なお金と、現在の貯蓄と年金見込額がわかれば、定年後に稼ぐ必要があるのか、その場合にはいくら稼げばいいのかも見えてきます。貯蓄のみでは定年後に必要なお金を賄えなさそうであれば、定年後も就労することを検討する必要があります。自身が送りたい老後の生活をするためには、実際いくら稼げばよいのか、具体的な収入額を計算しましょう。

再雇用と再就職にはそれぞれメリット・デメリットがある

定年後に必要な生活費に対し、貯蓄と年金で足りない分は、働いて稼ぐことが一般的な対策といえるでしょう。働く場合は定年前と同じ会社に再雇用される場合と、別の会社に再就職する選択肢が挙げられます。

再雇用のメリットは慣れた環境で働けることです。定年前と通勤方法などが同様であり、仕事内容や人間関係もある程度は事前に把握、想像できることが多いでしょう。一方、自分が定年前に役職者の場合、再雇用後には役職がなくなり、元部下が上司となってお互いに仕事がやりづらいといった状況が生まれる可能性もあります。

再就職のメリットはこれまでの環境を一変させ、改めてチャレンジできる点が挙げられます。今までの職場に不満があった人や、昔からやりたかったことに挑戦してみたい人にとっては、再就職は良い機会です。一方、就職活動をする必要がある点や、今までのやり方が通用しない可能性がある点などには注意が必要です。

まとめ

定年後は再雇用の場合でも再就職の場合でも、年齢が高くなればなるほど収入は減っていく傾向にあります。

本記事を参考に、定年前にできる基本的な確認、シミュレーションを実行したうえで、定年後どのような働き方、生き方をしていくのがいいかを検討しましょう。

出典

内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)第2節 高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査
株式会社リクルート ジョブズリサーチセンター 【基本報告書】シニア層の就業実態・意識調査 2023―個人編 60~74歳―

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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