子どもに年収を聞かれたとき、親は何と答えていいのか戸惑ってしまうものでしょう。しかし、子どもがお金に興味を持つ大切な時期であれば、ついつい金額をごまかしたり、回答を断ったりしないほうがよいかもしれません。本記事では、FPオフィス ライフ&キャリアデザイン代表の山内真由美氏の著書『FPママの親と子で学ぶお金のABC:13歳からのマネーのレッスン本!』(河出書房新社)から、中学生の子どもに年収を聞かれた際の答え方について解説します。
親の収入についてどこまで話す?
病院の会計・受付にて
係の人「お子様の医療証のご提示はありませんか?」
親「子の医療証はありません」
係の人「わかりました。では、健康保険の窓口負担割合の3割で計算します」
親「お願いします」
自宅に戻って
子「なぜ、私の医療証がないの?」
親「子どもの医療費助成制度には、年収の制限があるの。パパの年収が市で決めた年収制限よりも上だから医療証がもらえないの。東京都内のほかの自治体は、年収制限がないところもあるけど、残念ながら、うちの市には年収制限があって……」
子「そうなんだ。住んでいる場所で違うんだ」
親「医療費助成以外でも、自治体でさまざまな違いがあるよ。うちの市は保育園の待機児童もかなり多かったから、入れなかった。だから住む場所を決めるときには、自治体の行政サービスの内容を比較したほうがいいよ」
子「へえ、そうなんだ。ところで、うちは収入高いの?」
親「うちは子どもが生まれるのが遅かったでしょ。だからいま50代、人生のなかでも比較的収入が高くなる時期なの」
子「ふーん。で、いまのパパの収入はどのくらいなの?」
親「手取り収入といって、実際に銀行の口座に入ってくる金額は月に〇万円ちょっと。あとはボーナスとして夏と冬にまとまった金額をもらっているよ」
子「手取り収入? 給与がそのまま入ってこないの?」
親「給与から、税金と社会保険料を払う必要があるの」
子「税金は学校で習った。いろんな公共施設をつくったりするのに必要なんだよね。じゃあ、社会保険料は何?」
親「年金や健康保険、それと雇用保険とかかな。年金はお年寄りになったら生活費として受けとるお金。健康保険は、さっき病院で使ったよね。医療を受けるために必要なもの。そして雇用保険は、失業したときなどに、お金をもらえるもの」
子「給与は全部もらえるワケじゃないんだね。で、うちは月○万円で生活できるの?」
親「うん。すごく余裕があるというほどではないけど、足りない状態ではないよ。また今度、うちの支出についても話すね」
子どもに学んでほしい点は…
親が働いて月にいくらもらっているか、気になる人もいるよね。大人になったら、収入のなかから、家族みんなが生活できるように、住居費や食費、水道や電気代などを支払うよ。働いて得た収入から、まずは税金や社会保険料を負担する。そして、手取り収入の範囲内で生活していくことが大切。
じつは生活していくのに必要なのは、お金だけではないよ。毎日の食事の支度、部屋のお掃除、洗濯も欠かせないこと。外で働いてお金を稼ぐことは中学生にはできないことだけど、家のなかの仕事は、ぜひとも家族みんなでシェアしてね。
おうちの方へ、アドバイス…
子どもに年収を聞かれたら、どう答えますか? 「そんなこと聞くもんじゃない」とか「子どもはお金の心配なんかしなくてもいい」と、頭ごなしに回答を拒否するのは、やめましょう。
なぜなら、そういわれた子どもは「お金の話はしてはいけない」「家族でもタブーな話題だ」といしてしまうかもしれないからです。子どもが中学生くらいになったら、ある程度はオープンにしてもいいのではないでしょうか。
わが家は父親と母親の手取り月収、そして、その範囲内で生活できていることを伝えています。実際の生活にはいくら収入が必要なのか、金銭感覚を身につけてほしいとの考えからです。
そして中学生は、税金や社会保険料の負担についても伝えたほうがいい時期だと思います。大人になる前に、簡単ではありますが、給与から負担しなくてはならないお金があること、その理由をおおまかに伝えました。
年収についてくわしく伝えるかどうかは、まだ早いかな?と思い、ボーナスなど、わりと変動が大きいものの金額は伝えていません。ボーナスが出たら、帰省や旅行、そしてクリスマスプレゼントなどの特別な支出をすることは伝えています。
山内 真由美
FPオフィス ライフ&キャリアデザイン
代表
ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント