焦点:英金融市場、総選挙の日程決定で不透明感後退 金利・経済に注目

Harry Robertson

[ロンドン 23日 ロイター] - 英金融市場では、7月4日に総選挙を実施するとのスナク首相の予想外の発表を受けて、先行き不透明感が後退した。今後は主に金利・経済見通しが為替・株式・債券市場を左右するとの見方が多い。

世論調査では野党・労働党が一貫して与党・保守党を20ポイント前後リードしており、大半の市場関係者は労働党のスターマー党首が次期首相に就任すると予想している。

アナリストによると、スナク、スターマー両氏は大規模な財政政策の発表で市場を混乱に陥れることは避ける見通し。2022年には当時のトラス首相が、財政赤字の急増につながる大型減税を盛り込んだ「ミニ予算」を発表し、国債とポンドが急落した経緯がある。

英国市場は高インフレやミニ予算を背景に3年にわたって不安定な展開が続いてきたが、最近は落ち着きを取り戻しており、株式市場は最高値を更新。ポンドは値上がりし、英国債にも大口投資家の買いが入っている。

UBSの金利ストラテジスト、エマヌイル・カリマリス氏は「総選挙が、予想されていた秋から前倒しになったことは市場にはプラスかもしれない。秋までに追加の財政刺激策が発表されるとの観測が浮上していたためだ」と指摘。市場は労働党のプランに注目するだろうが、引き続き国内外の経済動向が値動きを左右するとし「選挙が今後数週間の英国債市場に多大な影響を及ぼすことはないだろう」との見方を示した。

ネット証券「eToro」のグローバル・マーケッツ・ストラテジスト、ベン・レイドラー氏は、トニー・ブレア元首相率いる労働党が地滑り的勝利を収めた1997年の総選挙と状況が似ていると指摘。

「基本的には、当時の市場は総選挙に向けて一本調子で上昇した。大きな政策変更は議論されず、選挙を巡る不透明感も強くなかった」と語った。

<英国債に投資妙味>

債券市場の見通しは次期首相にとって特に重要だ。同国では新型コロナウイルス流行中に政府債務が急増。利払い負担が増えており、海外市場で引き続き大量の借り入れを行っている。

英国債市場は金利上昇やミニ予算で過去2年間、大打撃を受けてきた。ICE・BofAの英国債指数は22年以降、約30%下落。ユーロ圏国債指数や米国債指数の下落率は20%未満にとどまっている。

英政府は24/25会計年度に約2650億ポンド(3376億6000万ドル)の国債発行を予定している。発行額は過去2番目の高水準だが、投資家が購入に二の足を踏む気配はない。

アビバ・インベスターズの金利部門責任者、エド・ハッチングス氏は、比較的慎重な戦略だとした上で、米国債・欧州債よりも英国債の保有を選好していると発言。「英国の基調的な経済成長率は米国をはるかに下回っている。英国の財政拡大の可能性は恐らく米国より低い」と述べた。

ピムコ、アムンディ、ニューバーガー・バーマンなどの資産運用会社も最近、インフレと金融政策に注目し、英国債の見通しが良好だと指摘している。

ニューバーガー・バーマンのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ジョン・ジョンソン氏は「23年に始まったディスインフレの流れは変わっていない。タイミングは不透明だが、道筋よりも終着点が重要だ。英中銀は今後2年間で200ベーシスポイント(bp)以上の利下げをするはずだ」と述べた。

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