独特なユーモアセンス…“福田雄一ワールド”炸裂! 名監督が手がけた漫画実写化作品の数々

(C)中村光/講談社 (C)2024映画『聖☆おにいさん』製作委員会

計発行部数1700万部を超えるギャグ漫画『聖☆おにいさん』(中村光さん)の実写映画『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』が、2024年12月20日に公開される。メガホンをとるのは、ドラマ版と同じく福田雄一監督だ。

福田さんといえば、これまでにも数々のマンガ実写化作品を生み出している。そのなかから、代表作をいくつか振り返ってみよう。

■過激なギャグとアクションが魅力『HK/変態仮面』シリーズ

2013年に公開された『HK/変態仮面』、2016年に公開された『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』は、いずれもあんど慶周さん原作『究極‼変態仮面』の実写映画だ。

主人公・色丞狂介がスーパーヒーロー・“変態仮面”として活躍する姿を描いた本作、実は映画のストーリーは完全オリジナルなのをご存じだろうか。それでいて原作の雰囲気はそのまま、下ネタ満載の過激なギャグとアクションも見どころだ。

また、主役を演じた鈴木亮平さんが徹底した肉体改造をおこない、キレッキレの肉体を全裸に近いコスチュームで惜しげもなく披露したことでも話題になった。宣材ポスターでは、”変態”と”ヒーロー”という本来相容れないものの掛け合わせが見事に体現されている。

■コメディとシリアスの融合『銀魂』シリーズ

続く2017年には、空知英秋さん原作の『銀魂』、翌2018年に続編となる『銀魂2 掟は破るためにこそある』を公開。主役の坂田銀時に小栗旬さん、志村新八に菅田将暉さん、神楽に橋本環奈さんといった豪華キャストが揃い、さらにキャラクターの再現度も高く、原作ファンからも賞賛の声があがった。

江戸時代に黒船でなく宇宙船が襲来したというシュールな舞台設定の本作は、コメディ要素とシリアスな展開との融合が持ち味だ。実写映画では、そのような原作の世界観もストーリーも忠実に再現されていた。

加えて、福田さん特有のギリギリまで攻めたパロディも見どころだ。観客は散々笑い、圧巻のアクションに手に汗握り、最後には泣くという、緩急のある作品となった。

■巧みなユーモアとテンポの良さはお手の物『斉木楠雄のΨ難』

2017年は『銀魂』だけでなく、麻生周一さん原作の『斉木楠雄のΨ難』も公開されている。

超能力を持つ高校生・斉木楠雄の日常を描く本作では、原作ストーリーをいくつかミックスしたうえ、福田さんならではのユーモアセンスが加えられた。とくに橋本環奈さんが演じた学園一の美少女・照橋心美は、外見の美少女ぶりに反する内面の凄まじさが強調され、原作以上に「おっふ」どころではなくなっている。

こういった巧みなユーモアとテンポの良い演出は、まさに福田さんの得意とするところだろう。

■漫画・アニメファンには嬉しい要素が満載『アオイホノオ』

映画はもちろん、福田さんの手掛けるテレビドラマも好評だ。

2014年に放送された『アオイホノオ』(テレビ東京系)は、島本和彦さん原作の自伝漫画だ。1980年代の大阪芸術大学を舞台に、漫画家を目指す少年・焔燃がデビューするまでの青春を描く。

本作の時代背景は日本の漫画・アニメの黎明期ということもあって、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督(ドラマでは安田顕さんが熱演)をはじめ、実在のサブカル系著名人をモデルにしたキャラが多数登場する。ドラマではそんなクセのあるキャラを完璧に再現していた。

また、作中で漫画やアニメの制作過程が描かれる際には、実際の作品や人物を登場させる場面も。漫画・アニメファンにはたまらない演出となった。

■「ツッパリ」文化を完全再現『今日から俺は‼』

同じく1980年代を舞台にした、西森博之さん原作の『今日から俺は!!』も2018年にドラマ化され(日本テレビ系)、2020年には劇場版も公開された。

「ツッパリ」と呼ばれた不良高校生たちの騒動を描く本作では、当時のファッションや音楽が忠実に再現されており、往年のファンのみならず、“エモさ”に魅かれる一部の若者にも話題となった。

キャラ同士の掛け合いやデフォルメされたギャグシーンなど、福田さんらしいユーモアが全編にわたって展開されている。喧嘩シーンも見応え十分。原作の良さをそのままに映像作品としての良さも光る、福田さんの代表作の一つと言えるだろう。

福田さんがメガホンを取った作品には、ほかにもまだまだ面白いものがあるが、有名どころをいくつか紹介してきた。

独特なユーモアセンスはもちろんのこと、キャストの魅力を最大限に引き出す監督としての手腕も、福田作品の見どころと言えるだろう。劇場版『聖☆おにいさん』にも期待したい。

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