宇宙ゴミの対応策、安くできるかも–NASA新研究

米航空宇宙局(NASA)の新たな報告書で軌道上に存在する宇宙ゴミ(スペースデブリ)をこれまでよりも安価に対応できる可能性が指摘されている。

デブリ除去方法としてはさまざまなアイデアが登場しており、衛星でデブリを捕獲する方法から、レーザーを活用するもの、膨張式のバッグで捕獲するものまである。

NASAの「軌道上のデブリの軽減、追跡、修復の費用と便益の分析」と題された報告書(PDF)では、衛星などの宇宙機と軌道上のデブリとの衝突リスクを軽減するための10以上の異なる戦略と費用対効果が比較されている。

報告書をまとめたのはNASAの技術・政策・戦略局(Office of Technology, Policy, and Strategy:OTPS)。OTPSの副局長であるCharity Weeden氏は「軌道での活動の活発化は、地上への通信の高速化、気候の変化に対する理解の深まりをもたらした」と地球を周回する軌道で増加し続ける衛星の意義を表現した。

今回の報告書はデブリという重要な問題に「経済的レンズを適用することで、周回軌道に対する理解を急速に向上させるためのNASAの作業の一部」(Weeden氏)と説明する。

今回の研究では、今後30年間の軌道環境をモデル化し、無傷の大型衛星や使い捨てられたロケットによる小型の破片に至るまで、あらゆる種類のデブリがもたらすリスクを検討している。ミッション終了後の宇宙機の迅速な軌道離脱や大型のスペースデブリの除去など、さまざまなデブリの軽減や修復の戦略も評価している。

研究の意義について、報告者の主な執筆者であるNASAのアナリスト、Jericho Locke氏はこう語る。

「(デブリのリスクに対応するために)宇宙機を覆い隠した方がいいのか、より小さなデブリを追跡した方がいいのか。それとも、50個の大きなデブリを除去するべきなのか、5万個の小さなデブリを除去するべきなのか。これらをドルで測定して直接比較できるようになった」

報告書は、デブリの数というリスクの大きさを示す指標ではなく、デブリがもたらすリスクを直接推定している点で、これまでの軌道上のデブリ研究とは異なっていると解説している。

関連情報
NASA発表
NASA報告書(PDF
Space.com

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