市原隼人「今回も完全に自分のキャパを超えながら、甘利田を演じさせてもらいました」『おいしい給食 Road to イカメシ』

By GetNavi web編集部

1980年代を舞台に、給食マニアの中学教師と生徒が静かな“闘い”を描くコメディドラマ『おいしい給食』の劇場版第3弾が、5月24日(金)より公開。主人公・甘利田を演じ、新境地を開拓した市原隼人さんが、老若男女が楽しめる極上の給食スペクタクルコメディを生み出すための熱い思いを語ってくれました。

市原隼人●いちはら・はやと…1987年2月6日生まれ。神奈川県出身。2001年、『リリイ・シュシュのすべて』で初主演し、『偶然にも最悪な少年』(2004)で日本アカデミー賞新人賞を受賞。近年の主な映画出演作に、『ヤクザと家族 The Family』(2021)、『太陽は動かない』(2021)、『劇場版 おいしい給食』シリーズ(2020、2022)などがある。Instagram

【市原隼人さん撮り下ろし写真】

これまでの中でも群を抜いてハードな撮影

──今回はドラマシリーズのseason3の完結編となる劇場版・第3弾が公開されます。反響はいかがですか?

市原 タクシーに乗れば運転士さんに、駐車場に停めれば、係の方に、お店に入ればお店の方に、行く先々で、「おいしい給食見てます!」とお声がけいただき、役者仲間や別作品のスタッフさんからも、現場で「おいしい給食見てる」と言っていただきます。毎回毎回「もうやりきった、これで終わりだ」という気持ちで全力を尽くし、奮闘しながらやっているのですが、こんなにいろんな方に作品を認知していただけるようになって、本当にうれしい限りです。一つひとつやってきて、気がついたら奇跡の「season3」を創らせていただくことになり、これもひとえに、熱望してくださった作品ファンの皆さまのお気持ちの賜物。もう夢のようです!

──season3が決まったときの率直な感想は?

市原 正直なところ、「またも甘利田という大役を務められるのか?」という思いでいっぱいでした。これまで、役者として様々な役をやらせていただきましたが、甘利田を演じるということは、精神的にも体力的にも群を抜いてハードなんです。例えば、基本の前準備としては、甘利田は、たくさん動かなくてはいけないですし、給食のシーンも長回しで何度も食べるので、撮影に入る前に体重を10キロほど落とし、身体作りから始めるんです。なので今回の脚本もいただいても、すぐには読めなかったです。他の役が入っていない時にしっかり向き合いたかったので。

──そこから甘利田先生独特のトリッキーな動きに繋がるんですね。

市原 season1のときから、いろんな可能性を試し、脚本にたくさん肉付けさせていただける現場なので、給食前に高揚して踊っている姿とか、すべて自分のアドリブで動いています。それも先に録ったナレーションと合わせなければならないので、給食のシーンは、事前にすべてを構築してから現場に入ります。そんなことを毎日考えていると、全く眠れないんです。役者冥利に尽きることなのですが、撮影中はずっとハードですね。今回も給食を食べながら、意識が飛んでしまったりとか、完全に自分のキャパを超えながら演じさせていただきました。

こんな世の中で信じられる作品を作りたかった

──作り手として、season1からの大きな変化はありますか?

市原 season1のときから作品のコンセプトは変わっていません。原作のないオリジナル作品の中、お子様が見ても目を背けさせないよう、人生のキャリアを積まれたご年配の方が見てもしっかりと楽しめるよう、王道のエンターテインメントの象徴として、「キング・オブ・ポップ」を創りたいという思いでやっています。ジャンルにとらわれない唯一無二の世界観の中、社会派でもあり、人生の糧となるようなセリフや強いメッセージ性に関しては、シリーズを追うごとに増えていると思います。現場の制作陣、キャストが一丸となって、いろんなものを生み出そうとしている、なかなか珍しい現場だと思っています。

──舞台は北海道・函館ですが、函館ロケの思い出を教えてください。

市原 今回初めて、北海道の函館という具体的な地名が出てきて、舞台が冬に舞台になりました。台本の冒頭に「私は極端に寒がりだった」というモノローグが書かれているのを見て、「これは面白くなるに決まっている!」と思いましたね。実際に極寒で大変でしたが(笑)、確実にパワーアップしていました。いろいろな名産品で知られる北海道で撮影させていただきつつ、例えば、教室の中にはストーブがあり、その横にライバルの生徒が座っていることで、新たなドラマが始まります。とてつもなくパンチの効いた、すごく面白い第3弾が出来上がったと思います。

──甘利田先生を長く演じ続けることでの意識の変化は?

市原 声を枯らしながらもなお、何度も何度も叫び続けるのは、生徒に対するエールであるのと同時に、視聴者や観客の皆さまへのエールのようになってきています。ただ甘利田をどう進化させようかと思った末、行き着いた答えは変わらずに在り続けることだったんです。「甘利田はシンプルだが、世の中はシンプルではない」というセリフがあるんですが、全くそのとおりで、現代は何が正解か分からない時代だと思うんです。国が違えば、法律もルールも違うし、同じ理念を持った会社でも上司が違えば、やり方もルールも全く変わってしまう。そんな中で、この世の中で信じられる作品を創りたかったんです。僕はこの作品に救われていますし、いろんな方の支えになることができたらうれしいなと思いながら創っています。

お客様を含め、全員が主役の「劇場版」

──印象に残っている撮影エピソードを教えてください。

市原 生徒たちの笑顔は、みんな素敵でした。とても緩急がある現場で、シリアスなシーンでは息もできないほどの緊張感なのですが、カットがかかれば、みんな笑顔で、ずっと給食を食べていたり(笑)。ペンギンみたいに、ワーッとモニター前に群がってきて、すごく楽しそうにチェックしている姿も愛おしかったです。そんな彼らの思春期の貴重な2か月を共にさせてもらうので、こちらとしても素敵な作品にしなきゃいけないと奮い立っていましたね。クランクアップでは、みんな泣いていましたし、僕も同じ思いで涙を流しながら、「一緒に戦ってくれてありがとう」と声をかけました。

──今回の大きな見どころとなる、学芸会でのシーンについては?

市原 甘利田がお手本を見せるシーンでは、綾部監督に「ちょっと時間ください」とお願いして、できるすべてをやり尽くしました。あそこは特に笑わせたいのではなく、笑われたかったんです。「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」というチャップリンの言葉のように、給食や生徒に振り回されつつ、人生を謳歌している甘利田の背中を見ていただきたいです。

──市原さんから見て、「ドラマ版」と「劇場版」の大きな違いは?

市原 「劇場版」には、30分の「ドラマ版」では見せ切れない人間臭さを含む群像劇がたっぷり詰まっています。そして、お客様を含めて全員が主役だということを感じていただきたいです。今まで描かれてこなかった比留川先生(大原優乃)との『おいしい給食』ならではのラブシーンにも期待していただきたいです。

甘利田はもっと窮地に!?

──今回タイトルにもなったイカメシのほか、さまざまな給食メニューが登場します。

市原 今回も例のごとく、給食中にイリュージョンのシーンがあり、気付いたら教室から知らない場所に飛ばされたりするので、それがどういう形になっているか? 果たして、「甘利田はイカメシを食べられるのか?」という点も楽しんでいただきたいです。また、子供の頃は何も考えずに食べていた給食ですが、そんな給食を紐解いていくと、国が見えてきたり、情勢が見えてきたりとか、その地域の特色が見えてくると思うんです。大人にとって、ノスタルジックな思いだけでなく、そういう現状も改めて考えていただけるかもしれません。

──今や市原さんにとってハマり役となった甘利田先生に、今後どうなってほしいですか?

市原 日本は豊かな食文化に溢れているので、いろんな地域に行って、その名産品に振り回されてもらいたいですね。そして、もっともっと窮地に追い込まれてほしいです(笑)。

──GetNavi webにちなみまして、現場にいつも持っていくモノやアイテムがあれば教えてください。

市原 身体ひとつでできるものが芝居だと思っていますから、そういうものは特にないんです。強いて言えば、カメラぐらい。「おいしい給食」の現場でも、生徒たちを被写体にかなりの枚数を撮りました。キャノンのEOS 5Dにオールドレンズつけたものや、R5やR6を使ったりしています。あとは、生産が終わってしましたシリーズなのですが、35mmフルサイズが撮れるソニーのRX1RM2です

──あと、市原さんの趣味といえば、バイク。愛車であるカワサキZ1(900Super4)の調子はいかがですか?

市原 50年前のバイクで、シンプルな構造だから、乗っていて楽しいです。今はエンジンを全部ばらして、作り直しています。砂型から作って、そこに鋳造して、三次元測定器でアライメント取って。今まで排気量1015ccだったのですが、永遠のテーマであるカスタムに一度ピリオドを打ちたいと思いまして、ツインプラグ化し1200ccにして自分で組み立てようと思っています。その愛機とともに、トム・ソーヤやチェ・ゲバラのような気分で、行先を決めずアメリカ横断したいと思っていて、それをドキュメンタリーとして企画している最中です。

<作品紹介>

おいしい給食 Road to イカメシ

5月24日(金)より公開

【映画「おいしい給食 Road to イカメシ」よりシーン写真】

(STAFF&CAST)
監督:綾部真弥
脚本:永森裕二
プロデューサー:岩淵 規

出演:市原隼人、大原優乃、田澤泰粋、栄信、石黒 賢、いとうまい子、六平直政、高畑淳子、小堺一機

(STORY)
1989年、冬。函館の忍川中学に転勤した甘利田幸男(市原隼人)は、新たな食のライバルでもある生徒・粒来ケン(田澤泰粋)と、毎日ひそかに給食バトルを繰り広げる。そんな彼に新米教師の比留川愛(大原優乃)が憧れを抱くなか、忍川町では町長選挙を前に忍川中学が給食完食のモデル校に選定され、政治利用されようとしていた。

公式HP https://oishi-kyushoku3-movie.com/

(C)2024「おいしい給食」製作委員会

<書誌情報>

【公式ファンブック】おいしい給食 うまそげBOOK

5月21日発売 価格1500円+税 ワン・パブリッシング行 Amazon購入リンク

最新劇場作「おいしい給食 Road to イカメシ」最速見どころレポート!

5月24日より全国公開される最新劇場作「おいしい給食 Road to イカメシ」の舞台は函館、北の地に降り立った中学教師の甘利田(市原隼人)は、念願の『イカメシ』を味わうことができるのか、そして独自の給食道をいく生徒、粒來ケンとの給食バトルは!? ほかにも給食の完食を公約に掲げる等々力町長(石黒 賢)の登場、密かに想いを寄せる甘利田先生と比留川先生(大原優乃)の恋の行く末など、本書では劇場作品の公開に先駆けて見どころレポートを掲載します。劇場に向かう準備としてもファン必読です。

完全保存版! テレビシリーズや劇場作品の全話紹介プレバック大特集!

給食を愛する甘利田先生が歩んだこれまでの「給食道」に迫る大特集は必見! これまでのテレビシリーズや劇場作品の全話ガイドに加えて、振り返り視聴する際にも役立つ人物相関図や生徒の座席表なども記載。また全作品で登場した給食メニューの一覧や貴重な撮影オフショットも楽しめます。また巻頭では、主演の市原隼人さんのロングインタビューが読めるほか、最新作のヒロイン比留川先生役の大原優乃さんとのスペシャル対談で撮影舞台裏話も余すことなく掲載しています。

付録でも誌面でも楽しめる心に響く名言集!

クスっと笑えるものから心に深く突き刺さる言葉も「おいしい給食」の魅力のひとつです。本書では、劇場最新作品で登場する名言で彩られた特製シールが付録として付きます。誌面では、これまでの作品から厳選された名言の数々をそのシーンとともに楽しめます。本書発売を記念してスペシャルなプレゼントが当たる「発売記念キャンペーン」を5月31日(金)まで開催中!

発売記念キャンペーンページ:https://kids.gakken.co.jp/feature/campaign/oishiikyusyoku/

撮影/金井尭子 取材・文/くれい響 ヘアメイク/大森裕行(VANITÉS) スタイリング/小野和美

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