【町田戦連敗で早くも1冠喪失――鹿島が露呈した課題(1)】「町田は誰が出ても同じチームを作れるほど完成度が高い」。古巣相手に佐野海舟が突きつけられた鹿島の現在地

鹿島アントラーズが町田戦で敗れた 撮影:中地拓也

5月19日のJ1第15節・ヴィッセル神戸戦を1-0で勝ち切り、首位・町田ゼルビアに勝点3差まで迫ってきた鹿島アントラーズ。本当の意味での常勝軍団復活のためには、その町田を撃破しなければならなかった。

すでに彼らは3月9日のJ1第3節に0-1の苦杯を喫しているが、同じ相手に2度は負けられない。5月22日のYBCルヴァンカップ1stラウンド3回戦では何としても白星を挙げるべく、ランコ・ポポヴィッチ監督も選手たちも闘争心を燃やしていたに違いない。

とはいえ、超過密日程のミッドウイーク。町田がJ1の前節・東京ヴェルディ戦から先発10人を入れ替えたのと同様、鹿島も6人を変更した。鈴木優磨や仲間隼斗ら出ずっぱりの選手を外し、垣田裕暉や松村優太ら今季出場時間が少ない選手たちが前線に並べたのは、メンバー固定が顕著だった指揮官にとってはかなり思い切った決断だったはず。「彼らが新たな起爆剤になってくれればいい」という期待を込めての起用だったのだろう。

しかしながら、前半の鹿島は攻守両面でギクシャク感が目立ち、スムーズな試合運びができなかった。開始20分の1失点目はGK早川友基のパスをバスケス・バイロンに拾われ、エリキを経由し、ミッチェル・デュークに決められらもの。まさにミスから手痛い一発を浴びることになった。

■「町田はやるべきことがハッキリしていて」

36分の2点目も、アクシデントでボランチに入っていた名古新太郎への左SB安西幸輝の横パスがズレ、下田北斗にカットされたのが発端。下田が左サイドに出した際、須貝英大が足を出したものの奪えず、ナ・サンホからバスケスに展開され、またもデュークに決められてしまった。

「メンバーは変わりましたけど、実際やられているところは自分たちのミスだったので、(メンバー交代は)失点に影響していない」と佐野海舟は前向きに語ったが、連携連動がスムーズに行かず、前への推進力も出せなかったツケがミスという形になって表れたという見方もできる。そこは控え組がズラリと並んだ町田との大きな違いと言うしかない。

「町田はやるべきことがハッキリしていて、それをみんなが徹底している。本当に誰が出ても同じチームを作れていて完成度が高いと思います。自分たちは出ている選手が出れてなかった選手を生かしたり、動かさないといけなかった」と佐野は古巣との差を痛感。レギュラー陣がサブメンバーを統率し、よさを出させる力も足りなかったと反省していた。

「町田のようにメンバーが変わってもやるべきことができているのが”あるべき姿”。誰が出ても勝てるチームが一番重要なので、勝てなかったのは自分の実力だと思います」と久しぶりに先発のチャンスを与えられた須貝も伏し目がちに語ったが、選手層の薄さという今季頭からの課題を鹿島は改めて再認識させられたと言っていいだろう。

■黒田監督「昔とはちょっと違う発想がある」

結果的に前半はシュートゼロ。後半になって鈴木優磨やチャヴリッチ、師岡柊生らJ1に出ているメンバーがピッチに立ったが、2点をリードした町田の堅牢な守備を崩すのはそう簡単なことではない。後半もシュート3本にとどまり、鹿島は完敗。町田に連敗し、早くも1冠を失うことになった。

「鹿島が伝統と歴史を多く刻んでいるチームという自覚はありますけど、今の若い選手たちはそういう印象がないのか、あまり気にしてない風潮があるのかなと感じます。

我々には昌子源という強かった時代のDFの柱がいますけど、若い選手はその時代をあまり覚えていないというか、それくらい時代が変わってきた印象もありますし、苦手意識も持たない。我々の方がむしろ意識をしてしまうくらいで、彼らはつねに町田のサッカーを志向するし、自分たちの役割を果たすことに舵を切っている。さすが今のZ世代の子たちと言うべきか、昔とはちょっと違う発想があるのか、すごく感心する一面がありますね」

敵将・黒田剛監督にこう評されてしまった鹿島。彼らはいかにして悔しい敗戦から這い上がるのか。常勝軍団復活の道が険しいことを深く刻んで再出発するしかないだろう。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

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