育成天国・ソフトバンクのファームにはユニークな球歴を持つ選手が多い。2022年ドラフト育成9位で入団した重松凱人外野手(24)は名門・亜大出身だが、大学4年間で公式戦の実績はわずか1安打。それでも長打力を買われ、プロの門を叩いた。王貞治球団会長(83)も注目する〝ロマン砲〟を直撃した。
――プロ入り1年目と2年目の心境は
重松 1年目の時は大学の時に試合に出られてなかったので、試合に出ることで精いっぱいだった。出ているだけで得られるモノがあったりとか、あんまり結果というところまで考えが及ばない感じでした。2年目は、去年たくさん試合に出させてもらったので、今年は結果にもこだわらないといけない。
――色紙に書いた今季の目標の「二軍定着」について
重松 今まで三軍でやってきて結果が出たことと二軍に行って(2試合出場)良くも悪くも自分の現状を知ったり、課題が見つかったことを改善したりしようと。二軍とか一軍のピッチャーになるとストレートの球速が速くなるので、そのストレートに負けずにしっかりはじき返せる。それをヒット、ホームランにできるスイングやタイミング、技術をもう一回作り直そうというのを一番の課題として取り組んでいます。ずっと三軍にいるわけにもいかないし、二軍、また支配下登録を目指して、一つ勝負になる年というか、去年三軍でいろいろと経験させてもらったことを次は試合に出て、結果として残していかないといけないという思いもありながら過ごしています。
――プロ入りしてから、苦労していることは
重松 練習でやってできていることが試合になるとできなかったりすることがすごく多くて、(5月3日に)王会長の話にもあったように10打席打席に立ったら、7打席失敗で3回成功と言われていたんですけど、三軍だったら3回ではなく4回、5回成功というようにしないと二軍にはいけない。7回失敗3回成功と言って3割成功の方をどういうふうにしたら成功したかということも考えたい。7回失敗したのかというのも見つめ直したい。打てても、打てなくても両方反省したい。分析を繰り返し行い、今後の課題にして練習をしていきたい。
――昨年秋のキャンプ時には王会長の金言を授けられた
重松 「君の課題はホームランを打つことだとハッキリと言われました」。昨シーズンはホームラン3本しか打てなかったですが、その後オフから意識するようになって、今年シーズン始まって1か月しか経っていないが結果(ファーム非公式戦での成績。5月6日現在本塁打7本)に現れている。チームの首脳陣が求めていることに自分が少しでも近づくことによって、支配下登録だったり一軍へ出られるチャンスが増えてくると思うので、今回言っていただいたことも、自分に言われているんだと思って取り組まなくてはならないと思った。ちょっと今、調子が落ち気味ですが、失敗はするものだという言葉を聞いて気持ちが楽になりました。言葉一つひとつに重み、説得力がある。三軍戦まで足を運んでくださっているので意気に感じて、これからやっていきたい。
―王会長は「一軍の選手に遠慮なく聞きに行ったらいい」とも言っている。誰に何を聞きたい
重松 今だったら山川選手。試合でホームランを打つための準備。試合でホームランを打つのは難しいです。練習でホームランを打つのは簡単までは言わないですけど、打てて当たり前。ホームランは、ひと振りで点が入りますし、チームの雰囲気も変わります。野球の醍醐味。ファンも盛り上がりますし、自分の選手のキャラ的にも求められている。すごく難しいものだと思うので、だからこそ、山川選手に試合でホームランを打つための準備をどうしているのかを聞きたい。
――グラウンドを離れてからのリラックス法は
重松 趣味は2つあって、マリオカートをオンラインで世界中の人とするのが好きです。また、NiziUのアイドルの動画とか音楽を聴くことです。テンションが上がるので、登場曲にしています。
――筑後の寮のいいところ
重松 特にいいのは食堂。おいしいですし、作ってくれるシェフの方も料理を提供してくれるお姉さん方もいつも明るくあいさつしてくれたり、話しかけたり試合も見てくれたりするので、会話がはずみます。
☆しげまつ・かいと 2000年4月12日、福岡県北九州市生まれ。右投げ右打ち。身長187センチ、体重95キロ。小学3年からソフトボールを始め、中学校は硬式野球「北九州中央リトルシニア」でプレー。中学の陸上部にも所属し、110メートル障害で全国3位となる。福岡・戸畑高から亜大に進学。東都大学野球リーグでは4年間で7打席で1安打だったが、長打力を買われてプロ入り。背番号166。5月20日現在、ファーム非公式戦に50試合出場し打率3割3分2厘、61安打、7本塁打、16盗塁、38打点。