【町田戦連敗で早くも1冠喪失――鹿島が露呈した課題(2)】「改善し続けることに尽きる」今季初出場の主将・柴崎岳がもたらすものとは…「外から事細かく観察していました」

町田戦でプレーする鹿島アントラーズの柴崎岳 撮影:中地拓也

今季J1初昇格の町田ゼルビアにリーグ戦に続き、YBCルヴァンカップでも手痛い黒星を喫した鹿島アントラーズ。0-2という結果も屈辱的だが、3対13というシュート数もショックが大きい。決定機らしい決定機は皆無に等しく、内容的にも完敗だった。

試合後、選手たちは敵地・町田GIONスタジアムに陣取った熱狂的サポーターから大ブーイングを浴びせられた。1つ目のタイトルを逃した事実はやはり重かった。

「アップの時にスタンドを見て、これだけたくさんの人に応援しに来てもらったんだと驚きましたし、その思いを勝利という結果で届けたかったんで本当に残念です。サポーターの声や思いを受け止めるために、少し長く時間を取ってゴール裏に行きました」

長いケガを乗り越えて、ようやく今季初出場を果たしたキャプテン・柴崎岳は真っ先にサポーターの前に歩み寄り、深々と挨拶をした。自身の復帰戦、しかも青森山田高校時代の恩師・黒田剛監督率いる相手にこんな負け方をしてしまったのだから、悔しさや不完全燃焼感、複雑な感情が去来したはずだ。が、彼にはチームを立て直すという使命がある。背番号10に託されるものは少なくないのだ。

■柴崎岳「外から事細かく観察していました」

「ここまでのチームの紆余曲折や善し悪しがありながら、今の順位やサッカースタイルに辿り着いている。僕はそれを外から事細かく観察していました。

そこで自分がやるべきなのは、今日みたいに途中から出て流れを変えることもそうですけど、やっぱり変化がないといけない。攻めあぐねたり、統一感が欠けた時にコミュニケーションを取ったりもしたい。フィットネスの部分も個人的に上げていかなきゃいけないし、徐々に出場時間を延ばして、コンディションを上げていければいいと思います」と柴崎は言う。

彼がフル稼働できるようになれば、中盤に落ち着きが生まれ、もう少し巧みなゲームメークもできるようになるだろうし、前線の鈴木優磨やチャヴリッチらの決定機も増えてくるはず。急造ボランチとして奮闘してきた知念も再びFWで使う余裕も出てきそうだ。「彼のクオリティはよく分かっている」とランコ・ポポヴィッチ監督も大きな期待を寄せていた。

■「改善し続けることが大事」

とはいえ、いくら柴崎が戻ってきたからと言って、全てが解決するわけではないし、すぐに常勝軍団復活が叶うわけでもない。チーム全体がレベルアップし、今回の町田のように誰が出てもそん色ないプレーができる集団にならないと、到底トップには立てない。そのためにも、柴崎は細部にこだわって日々アプローチし続けていくことが重要だと考えている様子だ。

「選手は自分のベストを毎日尽くすこと。それに尽きるんじゃないかと思います。選手間やチーム間で駒かな部分まで日々、目を向け、改善し続けることが大事なんです」

そういうスタンスで長いプロキャリアを歩んできた柴崎の言葉には含蓄がある。彼自身もさまざまな苦しみや挫折に直面しながら、2016年FIFAクラブワールドカップや2018年ロシアワールドカップといった大舞台で異彩を放ってきた。そういう輝きを再び鹿島で見せてほしいというのが、多くの人々の切なる願いに他ならない。

同期の宇佐美貴史(G大阪)や宮市亮(横浜)も大ケガで選手生命の危機に瀕しながら堂々たる復活を遂げた。彼らにできたことが柴崎にできないはずがない。ここからが本当のスタートだ。

(取材・文/元川悦子)

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