JASRAC賞、YOASOBI「アイドル」が金賞受賞 HoneyWorks「可愛くてごめん」、[Alexandros]「閃光」が続く

JASRAC(日本音楽著作権協会)が5月22日、都内で2023年度の事業報告を行った。

このなかで発表された2023年度における音楽使用料は徴収額:約1371.6億円(前年度比+6.3%)、分配額:約1351.2億円(前年度比+7.5%)で、ともに過去最高となっている(分配対象の楽曲は約312.2万)。

主な増加項目は「インタラクティブ配信」が主要サブスクリプションの会員数増や一部の料金値上げなどによって約487.2億円(前年度比+9.1%)、「演奏等」はライブの開催件数増などから約237.2億円(前年度比+13.8%)。そして「ビデオグラム(ライブ映像など)」がライブ記録作品のリリース増を受けて99.8億円(前年度比+15.7%)だった。

この好調を受け、2024年6月以降の分配期管理手数料実施料率の一部を引き下げを実施するなどアーティストに還元する。

また2024年度も引き続き配信分野が好調を維持し、コンサートやカラオケなどの演奏分野でコロナ禍のダメージからの回復を維持することから昨年と同程度の徴収と分配の見込みだ。

生成AIについては、理事長・伊澤一雅氏が「音楽の発展につながってほしい。ただ大切なのは文化を生み出すのも育むのも人間だということ。『著作権』という人権を社会全体で守り創作を奨励する。そして文化の発展を目指すという原点を見失わないことが大切」と述べ、アーティストファーストの姿勢を強調した。

また、TikTokとユニバーサル・ミュージックの一時的な契約終了(現在は再契約)、Spotifyによる年間再生数が1,000未満の曲には楽曲利用料を支払わないというルール変更も昨今話題になり、プラットフォームの動向に注目が集まっている。こういった状況についても「著作権の状況を把握した上で交渉している」とした。

サブスクリプションやSNSの普及、そして生成AIの台頭で音楽を取り巻く環境が転換期を迎えている。著作権の門番として、プラットフォーム内の楽曲使用の監視者として、この時代にJASRACが果たすべき役割は大きいと言えるだろう。

この日、同会場内で「2024年(第42回)JASRAC賞」の贈呈式も行われた。

この賞は1年間に著作物使用料の分配額が多かった作品の作詞者・作曲者・音楽出版社を表栄するもので、1982年に創設された。2023年の分配対象楽曲数は約312.2万曲。このなかから各受賞作品が選ばれる。

見事に金賞に輝いたのはアニメ『【推しの子】』の主題歌として海外でも旋風を巻き起こしたYOASOBI「アイドル」。インタラクティブ配信やカラオケを中心に幅広い分野で利用されたのが要因だ。

作詞・作曲・編曲を務めたAyaseは、昨年度は楽曲「夜に駆ける」が銀賞を獲得した際に「いつか金賞もいただけるよう、引き続き精進します」とコメントしており、その発言を回収する形となった。

本人に代わり登壇したプロデューサーの屋代陽平氏は受賞に際して「私たちYOASOBIチームは、この『アイドル』に新しい景色を見させていただきましたし、今もなおその途上にあります」と語る。

さらにソニー・ミュージックパブリッシング代表取締役の見上チャールズ一裕氏は「『アイドル』を初めて聴いた時の衝撃は忘れません。ikuraさんの歌唱を含めて、完璧と言える楽曲が存在すること。その素晴らしい楽曲をグローバルなスタンダードナンバーとできるよう管理し、利用開発して参ります」と述べた。

銀賞に輝いたのはクリエイターユニット・HoneyWorksの「可愛くてごめん」。SNSを中心にZ世代の支持を得たことでインタラクティブ配信の分配額が年間2位、カラオケでも多く歌われたこともあり、今回の受賞に結び付いた。

そして作詞・作曲を務めたshitoは「このような栄誉ある賞を受賞させていただき大変うれしく思います。改めてたくさんの方に聴いていただけたことを実感しました。現状に満足することなく今後も多くの人に愛される音楽、エンターテインメントを発信できるように精進致します」とコメントを寄せた。

銅賞はアニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(MBS/TBS系)の主題歌を務めた[Alexandros]の「閃光」が受賞した。YouTubeショート動画のBGMとして多用されたこともあり、インタラクティブ配信の分配額では年間1位となった。

株式会社バンダイナムコミュージックライブ・代表取締役社長の垰義孝氏は「シリーズが45周年を迎える記念すべき年に受賞出来たという巡り合わせにも特別な想いを抱いております。この楽曲は長く続くガンダムの歴史に新しい風を吹かせてくれた」と感慨深げ。

また作詞・作曲を担当した川上洋平は不在ながら、縦読みで「ハサウエイ」と並ぶ粋なメッセージをしたためた。

なお国際賞は『NARUTO-ナルト-疾風伝 BGM』(作曲:高梨康治/音楽出版社:株式会社テレビ東京ミュージック)が5年連続、通算7回目の受賞。

外国作品賞はラジオ『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のテーマ曲としてもおなじみの『BITTERSWEET SAMBA』(作詞・作曲 SOL LAKE/音楽出版社:O.P.:ALMO MUSIC CORPORATION S.P.:ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング合同会社、株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)が選出された。

■Ayaseコメント

この度『アイドル』がJASRAC賞金賞をいただけたとのことで、大変光栄に思います。YOASOBIとしましては近年、色々な新しい出会いや活動の変化に恵まれているなと実感しておりますが、なんとかここまで突き進めたのは、間違いなくこの楽曲があったからだなと思っております。

沢山の方に愛していただける楽曲になってくれたこと、本当に嬉しく思っております。作曲者冥利に尽きます。これからも弛まず、日々精進して参ります。今後ともどうぞ末長く、応援のほど宜しくお願い致します。

■川上洋平コメント

はじめまして、川上洋平と申します。
さて、この賞は作家としての受賞ですが、メンバー全員で獲ったと思っております。
うれしい気持ちもありますが、次は必ず金を獲りにいきます。
エンターテイナーとしてこれからも精進します。
いつもありがとうございます。

(文=小池直也)

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